2012年2月9日木曜日

トロッタ日記120209

詩と音楽について、会の名前、企画の内容、作品の個性は違っても、考えていることはすべてひとつながりなので、まとめて書く。「詩の通信VI」2号分の発行が滞っている。詩はできているのに発行できないままだ。他の方はともかく、私にとって「トロッタの会」は、「詩の通信」から発展したものだ。

「詩の通信」第I期が終了した時、紙に印刷された詩を立体的に、具体的に、音楽として成立させ発表するために発案したのである。その後、時々にしか開催できない「トロッタの会」とは別に、定期的に詩を発表し、連絡もできる個人的メディアが必要だと、「詩の通信」第II期の発行を再開したのである。

だから「詩の通信VI」が滞っているということは、「トロッタの会」の準備も滞っている、私自身の活動が滞っているということになる。しかしすべきことはたくさんある。整理しよう。まず、亡くなられたギタリスト、石井康史さんを追悼する、谷中ボッサでの第7回「ボッサ 声と音の会」を6月に予定。

この曲は、私が海賊放送のDJ後鳥羽上皇に扮する「隠岐のバラッド 2」である。やはり後鳥羽上皇として詩唱する、清道洋一氏の『革命幻想歌2』が、3月12日(月)に日本音楽舞踊会議の演奏会「動き、舞踊、所作と音楽」で初演される。そのための新作詩も書いた。不明点は多いが稽古で理解しよう。

同じ日本音楽舞踊会議の会で、橘川琢氏の『春告花・三景』が初演され、これにも出演する。橘川氏の詩がどのようなものであるか不明だ。彼が春の詩を書くなら私もと、新作詩「春の落鳥」を書いた。これは橘川氏に受け取ってもらえたので、いずれ曲になるだろう。 そして田中修一氏との共同作業が続く。

田中修一氏とは、長谷部二郎先生編集の雑誌「ギターの友」を媒介にして作業している。萩原朔太郎の詩による歌曲を作っている彼について、私が書く。田中論だが、彼とやりとりしながらのことなので、共同作業と認識している。田中氏からの働きかけで私が新作詩を書く機会も、ここしばらく続いている。

「ギターの友」最新の2月号が完成し、それは朔太郎展を行った世田谷文学館と、朔太郎の写真を借りた前橋文学館にも送った。いずれ、前橋文学館で朔太郎関係の演奏会を開きたい。都内でもいいが、朔太郎が生まれた前橋で開くことに意味がある。ホールがあるのだから。詩の原点、音楽の原点を感じたい。

「ギターの友」の連載「ギターとランプ」では、田中氏のことばかり書いているが、それは了解していただきたい(ちなみに同誌には、長谷部先生と清道氏の対談も連載されている)。生まれた状況は、進められるところまで進めるのが私の行き方だ。萩原朔太郎を媒介に、詩と音楽の考えを進めていきたい。

具体的には書かない(また書けない)が、田中氏と進めていること。詩と音楽はどのように関わりあって曲が生まれるか。これはトロッタの最初期からいっていることだが、できてしまった音楽は、できたものと受け取るしかない。しかし曲ができる過程、これからできようとする曲にはまた別種の関心が湧く。

詩はどのようにして音楽になるか?その秘密(過程)に触れることこそ、トロッタを始めた動機である。それを田中修一氏と明かしたい。伊福部昭先生と更科源蔵氏という大きな前例がある。それを現代の私たちがトロッタで実行する。萩原朔太郎はひとりでそれを行った。朔太郎の営みは未完成に映るが……、

だがトロッタ以前から朔太郎の詩によって曲を作ってきた田中修一氏がおり、私もまた最近のことだが世田谷文学館の朔太郎展によって朔太郎にあった音楽について考え、さらに私のかつての友人が朔太郎論を一冊書いてそれきり音信不通になったことなど、様々な要素が関連し合うことが明らかになってきた。

トロッタ15で曲になる詩。まず私の詩は、清道洋一氏作曲『霧に歌っていた』、酒井健吉氏作曲『美粒子』と『トロッタ、七年の夢』、田中修一氏作曲『ムーヴメント6 海猫』、宮﨑文香さん作曲『宇宙でなくした恋』と『めぐりあい(題未定)』。今回、橘川琢氏の曲に詩はなく、堀井友徳氏は不参加だ。

他の方々の詩は次のとおり。更科源蔵氏による伊福部昭先生作曲『オホーツクの海』(原詩『昏れるオホーツク』)、柳田國男『遠野物語』による田中隆司氏作曲『寒戸の婆』。フェデリコ=ガルシア・ロルカ採譜『ロルカのカンシオネス〈スペインの歌〉』。その中の“zorongo”はロルカの詩と聞く。

その時々の数はともかく、いくつもの詩を集め、曲を集め、作曲家、演奏家と共にトロッタの会は続いてきた。それが今度で15回目。先に進むのに夢中で振り返る機会も少なく、また断片に終わってきた感があるが、例えば田中氏との共同作業を通じて、トロッタの本質に気づけるのではないかと思っている。

今日あたりは「詩の通信VI」を2号分、出せるだろうか。発送数はわずか3部。無料で送らせていただいていた時期は、数十部(実感としては100近く、それは錯覚だろうが)に及んだ。有料制にしたら3部だ。トロッタは15回、ボッサは7回、「詩の通信」は6期。しかし、まだこれからなのだろう。

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