2009年11月10日火曜日

「トロッタ通信 10-2」

古書店で、更科源蔵が著した文庫本『北海道の旅』を見つけました。現代教養文庫で初めて出た後、同じ文庫で改訂版が出され、後に新潮文庫にもなった、息の長い著作です。現代教養文庫の方が、写真は多く、文字も細かく収められていて、愛着が持てます。


私は、トロッタのような大きなことがあるたび、所蔵する本やCDなどを売り払ってしまうので、更科氏の著作も、かつてはたくさんありましたが、詩集『凍原の歌』しか、今は持っていません。『北海道の旅』はありません。今日も、買いませんでした。記憶だけで書きますが、伊福部昭氏が曲にした更科氏の詩のうち、少なくとも『摩周湖』と『オホーツクの海』が、『北海道の旅』には載っています。歌曲として、『摩周湖』は同じ題名ですが、『オホーツクの海』は、詩の題は『怒るオホーツク』でした。書き忘れましたが、先に紹介した歌曲『知床半島の漁夫の歌』も、詩は『昏(たそが)れるシレトコ』という題なのです。


私は、詩は詩人のものですが、歌になった場合は作曲者のものだと思っています。そして演奏された場合は、演奏者のものです。誰々の“もの”という考え方は、もしかすると、改める必要があるかもしれません。しかし、詩の題に並べて作者の名前を書き、楽譜にも曲名と並べて作曲者名を記す以上、それは誰々の“もの”だと、ありかを示していることにならないでしょうか。やかましくいえば、著作権ということになるでしょうが、責任と言い換えてもいいかもしれません。


歌曲『知床半島の漁夫の歌』は、題まで変えているのですから、伊福部昭氏の作品といえます。同様に、『捨てたうた』は、木部与巴仁の詩によりながらも田中隆司氏の作品であり、『雨の午後』は田中修一氏の作品です。私は突き放して考えています。更科源蔵氏が、どのような考えを持っていたかはわかりません。付け加えれば、私は作曲者に預けたのだから、好きにしてもらわないと、未練が残るとも思っているのです。


無事に終わったことと思いますが、本日十一月十日(火)、今井重幸氏の作曲により、笠原千恵美さんが歌った、ある曲が録音されたはずです。先日、その打ち合わせに、必要があって同席しました。詩が変更になったからと、今井氏が譜面を書き直して来られました。詩の一節を書き直すより、譜面を書き直す方がたいへんであり、時間がかかります。詩人は楽だからいいが、という考え方が成り立つでしょう。それは私もわかります。


飛行機に乗っている時、紙ナプキンに3分間で書きつけた詩に曲をつけたら、大ヒットした。そんな話を聞いたことがあります。しかし、楽譜は3分では書けません。楽器が多くなればなるほど、時間がかかります。そのような作曲者の大変さを間近にして、詩人は……と、私がそうであるのに思ってしまいます。100メートル競走のランナーは10秒以内で終わるが、マラソンランナーは2時間以上も走らなければならないから大変……。そんな比較は、しても仕方がないと、私は自分に言い聞かせます。


話がそれました。

トロッタを始める時、詩が音楽になる瞬間を見たい、そのようなことを考えていました。更科源蔵氏の詩が、伊福部昭氏の手で歌になる。そこにどのような動きが起こったのか。それを体験したくて、トロッタを始めたのかもしれません。作曲家や演奏家、他の方々の思いは、それぞれにあるでしょう。少なくとも私は、その動きに立ち会いたかったのです。それがもう、10回目を迎えようとしています。何が、わかったのでしょうか?


「10へ」;12

Yahoo!のオークションで落札しました靴が、宅急便で届きました。田中隆司さんの新曲『捨てたうた』で、木部与巴仁は洋装をいたします。昨日は、衣装のこととして書きました。上から下まで、もう10年以上も着なかった洋式の衣装を揃えました。『捨てたうた』の練習は、どこで行われても、洋服でいたします。機会あるごとに、洋服で町に出るつもりでいます。他の方にとっては当然のことが、私には当然ではありません。

トロッタ7にも足を運んでいただいた木版画家、星野修三さんの個展を見るため、神田神保町に近い、gallery mestallaを訪れました。星野さんは、ご経歴によると、美術を志して北海道から東京にやって来ましたが、身体表現にも深い関心を抱いて、土方巽の舞踏公演などに参加してきました。個展の会期中は、何度かパフォーマンスが予定されています。もともと、人の表現意欲はジャンルにおさまるわけがありません。ジャンルは後から作られたものです。トロッタにも、これは通じることです。星野さんの心のうちを、少しでも感じ取りたいと思いました。

午前中はヴォーカルの笠原千恵美さん、午後はピアノの森川あづささんに、チラシとチケットを渡しました。

靴と一緒に、詩人、藤井貞和氏の『湾岸戦争論 詩と現代』が古書店から届いたことを、個人的には記しておきます。一度、売り払ってしまった本ですが、また買いました。とうに絶版になっている本です。詩を書いていて、地球上の遠い場所で起こっている戦争について、知りませんとはいいたくありません。書いているものが恋愛詩であっても、常に地球上のできごとを意識したいと思っています。意識しつつ、恋愛詩を書きたい。それが、トロッタに参加する私の態度です。

2009年11月9日月曜日

「トロッタ通信 10-1」

死滅した侏羅紀の岩層(いわ)に
冷たく永劫の波はどよめき
落日もなく蒼茫と海は暮れて
雲波に沈む北日本列島

生命(いのち)を呑み込む髑髏の洞窟(め)
燐光燃えて骨は朽ち行き
灰一色に今昔は包まれ
浜薔薇(はまなす)散ってシレトコは眠る

暗く蒼く北の水
海獣に向う銃火の叫び
うつろに響いて海は笑い
空しき網をたぐって舟唄は帰る。

“shikotpet chep ot シコツペツに魚みち来れば
tushpet chep sak ツシペツに魚ゐずなりゆき
ekoikaun he chip ashte 東の方に舟を走らせ

ekoipukun he chip ashte 西の方に舟を走らす
tushpet chep ot ツシペツに魚みち来れば
shikotpet chep sak シコツペツに魚ゐずなりゆく”

流木が囲む漁場の煙
焚火にこげる鯇(サクイペ)の腹
わびしくランプともり
郷愁に潤む漁夫のまなじり

火の山の神(カムイ)も滅び星は消え
石器埋る岬の草地
風は悲愁の柴笛(モックル)を吹き
霧雨(ジリ)に濡れてトリカブトの紫闇に咲くか

伊福部昭氏作曲の『知床半島の漁夫の歌』です。詩は、更科源蔵氏。途中にアイヌの舟唄が挿入されていますが、これは伊福部氏の工夫です。『伊福部昭歌曲集』(全音楽譜出版社)によれば、「作詩者の許を得て挿入したものである」とのことです。また、もとの詩と、歌の詩にも相違があります。始まりの2行が違っています。更科氏の詩集『凍原の歌』(フタバ書院成光館・43)を見ます。

死滅した侏羅紀の岩層(いわ)に → (原詩)死滅した前世紀の岩層に
冷たく永劫の波はどよめき → (原詩)冷却永劫の波はどよめき

もとの詩では、旋律に乗らなかったのでしょうか。それは作曲者のみが知ることです。
トロッタ10で、『知床半島の漁夫の歌』を、バリトンの根岸一郎さんと、ピアノの並木桂子さんが演奏します。この歌には私、木部与巴仁も思い入れがあり、つたないながら練習をしてきました。最近は歌っていませんが、いつかは舞台で歌いたいとも思ってきました。

『音楽家の誕生』『タプカーラの彼方へ』『時代を超えた音楽』と続く、伊福部氏の三部作でも、この歌については触れています。『知床半島の漁夫の歌』を考えることは、詩と音楽について考えることでもありました。三部作が書き続けられるにつれ、少しずつ、その傾向は強まっていきました。記憶がはっきりしませんが、伊福部氏による歌の詩と、更科氏によるもとの詩が違っていることは、私には、ショックといっていい発見でした。

トロッタ10で用いられる私の詩は、もとの形をとどめていません。田中修一氏は“断章賦詩”という手法で、私の詩の部分のみを用い、『雨の午後』を作曲しました。田中隆司氏は、私の3つの詩を“解体再構成”して、『捨てたうた』を作曲しました。それぞれの方に、どうしてそうなさったのか、問うことは簡単ですが、それではおもしろくありません。私は、作曲者が詩を変えることを、それでいいと思っています。伊福部氏と更科氏という前例があります。変えていいと思う私の態度は、『知床半島の漁夫の歌』に拠っているようです。

トロッタのテーマは、“詩と音楽を歌い、奏でる”です。このことについて、改めて考えようと思います。

「10へ」;11

「10へ」は継続します。このタイトルで、トロッタ10について、簡単な報告をさせていただきます。「トロッタ通信」は別に書きます。

午前10時、トロッタ10のチラシが届きました。みごとな仕上がりです。小松史明さん、お疲れさまでした。同じ時間から、造形家の扇田克也さん、花道家の上野雄次さんと、阿佐ヶ谷にて打ち合わせがありましたので、おふたりには、さっそくお渡ししました。来年の6月、石川県金沢市のギャラリー点で、「扇田克也×木部与巴仁×上野雄次展」を行います。副題は、「遠い森」としました。このことは、トロッタとは別ですが、いずれ詳しくお伝えできるでしょう。打ち合わせが終わるころ、橘川琢さんも合流しました。橘川さんには、今夜、横浜で行われた「眞鍋理一郎 85歳記念コンサート」でチラシを配っていただくことにしたのです。トロッタ10の概要が、初めて不特定多数の方々に明かされました。

ヤマハ・エレクトーンシティ渋谷からの依頼で、先日のトロッタ9について、850字ほどの短い文章を寄せました。エレクトーン奏者、大谷歩さんのコメントも生かしてあります。アンケートも引用しました。結びは、またエレクトーンシティでトロッタを開きたい、というもの。実現できるように努めます。

夕方にかけて、作曲の今井重幸先生、ピアノの並木桂子さん、徳田絵里子さんにチラシを渡しました。また、作曲の田中隆司さんにもお渡しし、同時に、田中さんの『捨てたうた』で私が着る衣装について、了解を得ました。2種類持参しまして、どちらでもよいことになりました。音を出したわけではありませんが、衣装選びから、すでに『捨てたうた』は始まっています。

2009年11月8日日曜日

「10へ」;10

印刷会社のグラフィックから、チラシを発送したというメールが届きました。明日には着くことでしょう。明日から、気負いなく、「トロッタ10」のための「トロッタ通信」を書き続けていくことにします。「10へ」というタイトルは、ちょうど10回目だからではありませんが、今夜でおしまいにします。

明日は、眞鍋理一郎さんの「85歳記念コンサート」が、横浜美術館B1のレクチャーホールで開催されます。伊福部昭先生の御門下であり、私もうかがいたいのですが、無理ではないかと思われます。今は、トロッタに神経を集中させていきたいのです。しかし、もしもチラシが間に合えば、会場で配らせていただきたく、その点はお願いしておきました。集客はもちろん、トロッタの会そのものの存在を、少しでも広めたく思います。

トロッタの作曲者、出演者のスケジュール調整を始めました。毎回、頭を悩ますところですが、これを乗り越えないと、演奏会の幕が上がりません。力を尽くしてまいります。今年最後のトロッタを、よろしくお願いします。

2009年11月2日月曜日

「10へ」;9

小松史明さんの尽力により、チラシを印刷所に入稿しました。チラシを入稿したということは、曲が確定し、演奏者も確定したということです。ずいぶんと長くかかった気がします。やっと決まったという思いです。この間には、いろいろなことを考え、迷いもしました。なるものはなり、ならないものはならないという、ある種の見極めが生まれました。後は、チラシができあがってくるのを待つだけです。これからは、ご報告できることも多くなってくるでしょう。

2009年10月30日金曜日

「10へ」;8

10月26日(月)、「詩の通信IV」第6号を完成させ、夜になって発送しました。まる一週間ずれてしまいまして、これはそのまま、トロッタ10の準備が遅れていることを意味します。このブログは、内輪話を書く場ではありません。内輪話にとらわれていることが、ブログを停滞させていました。しばらくお待ちください。チラシを入稿しましたら、改めてご報告いたします。

2009年10月25日日曜日

「10へ」;7

小松史明さんから、昨夜、チラシの基本デザインが送られてきました。文字のはみ出しや、未決定の情報があります。これは急いで調整していかなければなりませんが、チラシの姿は見えてきました。サイトのタイトル周りは、この新しいデザインから取ったものです。お楽しみに。

2009年10月22日木曜日

「10へ」;6

私はトロッタの製作一般に携わっていますが、出演者でもあります。詩を書いていることは、作曲しているのと、同じ位置にあります。しかし、本番の舞台に立たなければいけないので、その事実は大切にしたいと思っています。製作が忙しくて練習不足になることは、避けなければいけません。

一回行うたびに、いろいろ反省点が生じます。それは、実行しているゆえの反省点です。何もしていなければ反省点すら生じません。より大きく、というのは規模のことではなく中身ですが、トロッタがより大きくなるために、反省を繰り返し、クリアしていくことは必要です。トロッタ9を終え、そのためのトロッタ10です。先日の「ボッサ 声と音の会vol.5」も、トロッタではありませんでしたが、大切な経験として、トロッタ10の役に立ってくれることでしょう。

2009年10月20日火曜日

「10へ」;5

サイトに、トロッタ10で用いる詩をアップし始めました。時間がかかりますので、一度には無理です。あとほんの少しなのですが、手元に資料がないものもあるので、しばらくは未完成です。

昨夜、小松史明さんが、進行中のチラシを送ってくれました。今回も力作であり、すばらしいものになる予感がします。お楽しみに。

「詩の通信IV」の発行が、本来なら昨日でしたが、遅れてしまっています。日常の仕事がなかなか片付かず、そこにチラシ作りなどが加わっているので、はかどりません。しかし、今夜中には何とかしようと思います。

2009年10月19日月曜日

「10へ」;4

トロッタのサイトを更新しました。
チラシのための原稿を整理し、デザイナーの小松史明さんに送り始めました。
今回は時間がないので、すでに、急いで急ぎすぎることはない情勢になっています。
前回は、座・高円寺などに置いた「トロッタ通信」が3号にしか届かず、5号まで行きましたトロッタ8に比べ、物足りないものでした。それが集客に影響したかどうかはわかりません。しかし、もっとできたのではないかという思いを抱かせたことは事実です。努力しましたとは、5号以上を出して初めていえる言葉でしょう。

トロッタ10、ご挨拶文

作ってあげましょう

あなたのために

人形を

作ってあげる

あなたに似せた

やせっぽちの

人形

(田中隆司・作曲 木部与巴仁・詩 『捨てたうた』より)


*ご挨拶

2009年最後のトロッタを、第10回公演として開催いたします。会場は、第8回公演と同じ、新宿ハーモニックホールです。10回だからといって特別視しませんが、節目だとは思います。これまでのトロッタのあり方を見直します。依然と変わらず映った場合も、見直しをした結果です。今回はバリトンに、オペラ等で活躍される根岸一郎さんをお迎えします。伊福部昭氏の『知床半島の漁夫の歌』と、今井重幸氏の『時は静かに過ぎる』を歌っていただきます。“詩と音楽を歌い、奏でる”トロッタの世界を、さらに深めてくれるでしょう。また、演劇の世界でも活躍されている田中隆司氏の『捨てたうた』を初演します。木部与巴仁の詩三篇が田中氏の視点で構成され、スケールのある音楽世界となりました。さらに、田中修一氏の歌曲『雨の午後/蜚』、橘川琢氏の詩歌曲『死の花』などの新曲をまじえてお届けいたします。確かな節目を刻みたい、トロッタ10に、皆様、ぜひお越しくださいませ。*黄金色の光が射す、10月の午後に 木部与巴仁


2009年10月17日土曜日

「10へ」;3 再開します/「めぐりあい〜陽だまり〜」

ここしばらく、「ボッサ 声と音の会」が忙しく、また、日常の仕事もたまっていたので、ブログを更新できませんでした。今日から、再び書き始めます。昨夜、書きましたアンコール曲、「めぐりあい〜陽だまり〜」の詩を掲載いたします。トロッタ10では、田中修一さんが編曲してくださいます。また、先日のボッサでご一緒できた、パーカッションの内藤修央(のぶお)さんが、トロッタ10では打楽器奏者として参加してくださいます。うれしいことです。これも、“めぐりあい”といえるでしょう。

めぐりあい~陽だまり~


木部与巴仁


冷たい朝に身を寄せ合い

陽だまりがそっと生まれてた


白い息を

吐きながら

たったひとりで

歩いてゆく


冷たい朝に身を寄せ合い

陽だまりがそっと生まれてた


ひびわれたアスファルトが

幸せそうに

微笑んでいる

嬉しくなった

冬の街角


どこへ行くの?

わからない でも

私は生きられる

ありがとう

あなたの歌を聴いたから


2009年10月8日木曜日

ボッサが終わりそうです

「扇田克也+木部与巴仁〈ユメノニワ〉」展が、後半に入り、終わりが見えてきました。毎日、詩を書いて、ボッサで発表しています。毎日書き続けることは、なかなか大変です。しかし、書ける場があることは幸せですので、力を尽くしています。クロージング演奏会として行う、「ボッサ 声と音の会vol.5」後半の準備も進めています。本来なら、トロッタ9の反省を、この場に書かなければと思いつつ、前に進んでしまっています。「詩の通信IV」も、遅れていましたが、何とか、二号分を書いて、あとは印刷し、発送すればいいところまでこぎつけました。

皆さま、トロッタのメンバーが、ボッサに出演しています。お時間がありましたら、お越しください。よろしくお願いします。

2009年10月6日火曜日

シャンソン組曲の選曲

昨日、10月5日(月)、ヴォーカルの笠原千恵美さんから連絡がありました。トロッタ10で歌いたい、今井重幸先生の、シャンソンを選曲したということです。ここではまた曲名をあげませんが、3曲を選んでくださいました。トロッタ9では、3曲とも歌ったのですが、全体の時間の関係があり、トロッタ10では2曲にする予定です。

ただいま、私は、谷中ボッサでの〈ユメノニワ〉展にかかりきりです。具体的には、詩作を続けています。「詩の通信IV」も、トロッタ、ボッサと続いているため、本来は2週間前に出すべきだった第4号を出せず、昨日、出すべきだった第5号と一緒にして、読者には送る予定です。日常の仕事も遅れぎみで、昨夜など、明後日の木曜日かと思っていた締切原稿が、実は今日であったことに気づき、慌てました。電車を反対方向に乗ってしまったのも昨日でした。客観的にならなければと思います。忙しさの中、自分を見失わないようにしなければいけません。

2009年10月4日日曜日

トロッタ・アンサンブルTOKIO出演

930日(水)、谷中ボッサにて、art-Link上野-谷中 参加企画「扇田克也+木部与巴仁〈ユメノニワ〉」展が始りました。1012日(月)まで、火曜の定休日を除いて開催されています。

初日の19時から、造形家の扇田克也さんを迎えてオープニング演奏会が行われました。出演は、トロッタ・アンサンブルTOKIO 2009。プログラムは以下のとおりです。


 組曲〈都市の肖像〉第二集「摩天楼組曲」補遺~『ガラスの国』扇田克也展 五つの物語~ 作曲・橘川琢 詩・木部与巴仁  ヴィオラ・仁科拓也

 作家と語る  扇田克也と木部与巴仁によるトーク

 扇田克也〈ユメノニワ〉とある詩篇・1 「ユメノニワ・427号室」詩と詩唱・木部与巴仁  パンデイロ・内藤修央

 組曲『ユメノニワ』作曲・橘川琢、清道洋一  フルート・田中千晴 ファゴット・平昌子 ヴィオラ・仁科拓也 打楽器ほか・森川あづさ


10月11日(日)18時には、クロージング演奏会が行われます。初日の曲に、さらに新作を2曲加え、より演奏会の色を濃くいたします。お誘い合わせの上、お越し下さい。狭い会場ですので、御予約をいただければ幸いです。

ところで、会期中、私は毎日通いまして、詩を更新いたします。会場に置いた7冊の冊子の最終ページに、その日の詩を印刷して張り合わせています。詩は、このブログの「関係者活動情報」にあります、扇田克也さんのリンク先をクリックしてください。

2009年10月1日木曜日

渋谷にて;8(トロッタ9本番)

エレクトーンシティには、9時半入りです。到着すると、すでに大谷歩さん、清道洋一さん、田中修一さん、仁科拓也さん、宮﨑文香さん、三河修三さんが来ていました。中川博正さんとは、来る途中で会いました。調律の方は、8時から来て作業をしています。トロッタのために、人が動いているわけです。

楽屋に荷物を運び込み、10時の音出しを待ちます。待つといっても、することはいろいろあります。何といっても、私は差し替え曲になった『宇の言葉〜七角星雲・光うた・火の山〜』を告知するため、原稿を作らなければなりません。また、アンケートも作る必要があります。寝てしまって作業をしなかったのですが、寝ることは必要なので、私はかまいません。その皺寄せが、後で押し寄せるわけです。しかし、自分の練習時間以外にすれば間に合うという計算が働いていることは事実です。


10時から10時30分 エレクトーンの音出しに続いて、橘川琢さんの『宇の言葉~七角星雲・光うた・火の山~』を合わせる時間です。エレクトーンの音が、なかなかうまく出ないように見えました。トロッタはまだ、エレクトーンを自分のものにできていないなと思いました。もちろん、大谷歩さんに不安はありません。かつて、私はビデオ作品を作っていました。ビデオは電気に左右されます。もし、停電になったら……。それは妙な仮定です。停電になったら、室内で行われる演奏会そのものが中止になるでしょう。ともかく、電気に左右される表現を、私はやめました。エレクトーンはまさしく、ビデオと似ています。しかし、今回のトロッタは、エレクトーンを使うことが大前提です。作曲者にとっても出演者にとっても、ひとつの挑戦となったのです。


『宇の言葉』は、昨夜、池袋駅でもらっただけの楽譜です。自分の詩ですが、間違えずに詠めるでしょうか。いえ、間違えてもいいから、心の詩唱になるでしょうか。考えまして、私が前に正座することにしました。ヴァイオリンの戸塚ふみ代さんには、私の真後ろに立って、演奏していただくことにしました。


10時30分から10時50分 戸塚さんと、バンドネオンの生水敬一朗さんによる『Venus』です。曲は、生水さんの先生、アレハンドロ・バルレッタ氏によるものです。本番一曲目のシャンソン組曲もそうですが、出演者が歌いたい曲、演奏したい曲に取り組んでいただきたいと思い、プログラムに加えたのです。


10時50分から11時30分 橘川琢さんの『花骸-はなむくろ-』です。花の上野雄次さんが、どんなことをするのか、この時点ではまだわかりません。また、私が出す山蛭の声が、客席にどんな効果となって聴こえるかもわかりません。聴こえているようではありますが。戸塚さんのヴァイオリン、田中千晴さんのフルート、中川さんの声、すべてを聴きながら、深い山の中の光景を作っていきます。


11時30分から11時50分 田中修一さんの『ムーヴメント』です。赤羽佐東子さんの生の声が、赤羽さんが無理をしなくとも、客席に届くかどうか。打楽器、ピアノ、エレクトーンが大音量で演奏されます。もともと響きのない会場です。人工リバーブ装置に頼るしかありません。私が赤羽さんの歌を初めて聴いたのは、このエレクトーンシティで行われた日本歌曲の会でした。ピアノの森川あづささんと打楽器の星華子さんは、高校時代の同級生です。私とシャンソンの笠原千恵美さんもそうですが。個人的には、そのような人と人の歴史が、私は好きです。


11時50時から12時20分 大谷歩さんの『アルバ』です。大谷さんは、この一週間、山口から出てきて、知らない人ばかりの中に混じり、よく努力されたと思います。私自身、電話やメールでやりとりしていましたが、面識はありません。大谷さんが山口から出てきた日に、初めて会いました。『アルバ』で私が詩に詠んだ海は、大谷さんが見ていた海です。つまり、同じ瀬戸内海です。互いの共通項が、音になるわけです。これは不満ではなく、当然、そうなっていいわけですが、詩は、ずいぶん短くなっています。どこをどう取って曲にするか。その作曲家の判断に、私は関心があります。


12時20分から13時00分 これも海にまつわる曲、清道洋一さんの『アルメイダ』です。この日のために、清道さんは小松史明さんと、一枚の絵を作りあげました。そこには私の原詩が載っています。演奏に使われるテキストは、戯曲のようなものと私には映る、清道さんの創作です。実はこの二つの詩の関係が、いまひとつ、わかっていません。わからないまま本番に臨むのは不誠実かもしれません。しかし、その不安感が、私の声を通して形作られる、一人の男の姿には、ふさわしい気もします。結局、この音楽劇のような『アルメイダ』は、何なのでしょうか? 清道さんの思いを、どこかで語っていただきたい気がします。加えて、赤羽佐東子さんが歌う、女王のアリアを、より大きくした形で、私の原詩の長さで、聴きたいと思っています。


13時00分から13時半 今井重幸先生の『青峰悠映』です。田中千晴さんのフルート、平昌子さんのファゴット、大谷歩さんのエレクトーンで演奏されます。サントリーホールの小ホールで聴かせていただいた曲を、トロッタで演奏させていただけます。ありがたいことです。また、田中さんと平さんは、大学のオーケストラで共演していましたが、外に出て共演するのは初めての機会だとか。いいことだと思います。練習を聴きながら、私は差し替え曲の告知とアンケートを作りました。


13時半から14時 やはり今井先生が曲を書き、橘川氏と清道氏が編曲をした、“シャンソン組曲”。邦題で、「今井重幸によるヌーベル・シャンソン 新しい歌の流れ」です。ここで問題が生じ、音が厚すぎるために歌がまったく聴こえない事態となりました。急遽、検討をしまして、マイクを使うことにしました。トロッタでは、本来、ありえないことです。これもまた、試行錯誤です。試行錯誤をお聴き、見せてしまうわけです。いいのでしょうか。いいわけはありません。全員の努力を、よりよい形にまとめてゆく力が、不足していました。


14時から『めぐりあい』を合わせました。大谷さんのエレクトーンと、弦楽カルテットのみの演奏で、他の人は歌います。アンコール曲である『めぐりあい』まで、無事に持っていけるかどうか。非常な不安を抱えたまま、開場の時間が迫ります。詩唱者として、個人的には不安はないのです。トロッタとしての不安です。さらに、こうして書いている今、すでに終わったことなのに、その綱渡りぶりが不安になってきました。よく、終えられたと思います。


14時半 開場です。さまざまな反省を生ぜしめたトロッタ9が、始ります。この後のことは、公開されたことであり、書きません。ほめていただいた点もありますが、批判された点も多く、お客様が大勢お越しにならなかったことが、すでにトロッタへの批判かもしれません。トロッタ10は、絶対に、9以上のお客様を集めること。曲の差し替えやマイクの使用などをせずに済むこと、その他、さまざまな課題をクリアいたします。そのために、すでに動き出しています。

2009年9月29日火曜日

「10」へ;2

デザイナー、というより、美術家ですが、小松史明さんに、チラシのデザインを依頼しました。田中隆司さん作曲の『捨てたうた』を、絵のモチーフにしていただこうと思います。
この歌は、私の筆による三つの詩がもとになっています。『約束 一九七七年のために』『万華境』『時速0km下の世界』。ひとつひとつが長い詩が、どんな音楽になっているか。お楽しみに願います。

渋谷にて;7(記録として)

*以下は、すでに終わっているトロッタ9についての報告の続きです。


トロッタ9の前日練習です。これが終われば、もう後は本番だけです。

9月26日(土)、エレクトーンシティ渋谷、リハーサルルームでの練習は12時半から。10時半、kinko'sの渋谷店に行き、『アルメイダ』の詩を印刷しました。清道洋一さんが、曲のために書いた詩を、お客様に御覧に入れるためです。kinko'sは本当によく使います。自分で経営したいくらいです。

11時、エレクトーンシティに着きました。すでにエレクトーンの大谷歩さんは来ています。ヴァイオリンの戸塚ふみ代さんから連絡が入り、名古屋駅から品川駅に着いたので、これから渋谷駅に向かうといいます。彼女が合わせに参加できるのは一日切り。厳しいことですが、そのようにして、これまでのトロッタを乗り切ってきました。


12時半から13時半。まず『アルバ/理想の海』から合わせます。大谷歩さんに、ソプラノの赤羽佐東子さん、戸塚さん、ヴァイオリンの田口薫さん、ヴィオラの仁科拓也さん、チェロの香月圭祐さん。ヴォーカルの笠原千恵美さんは、今日は別の場所でコンサート出演があり、お休みです。皆さん、さまざまな条件があります。私は、練習できるなら、できるだけしたい方です。一度一度の練習で、新たな発見がありますから。しかし、それは不安だから練習するという、気休めに過ぎないかもしれません。


13時半から14時半は「アルメイダ」です。詩唱の中川博正さん、フルートの田中千晴さん、クラリネットの藤本彩花さん、ファゴットの平昌子さん、打楽器の星華子さん、ピアノの徳田絵里子さんが加わります。オーボエの今西香菜子さんはお休みです。たくさんの人が集まり、たくさんの音が聴こえます。清道さんは、これを音楽だといいます。演劇的要素の濃い音楽です。初めて楽譜をいただいた時、私には戸惑いがありました。音楽か演劇か、どちらだろうと。それぞれの起こりは、実は一緒なのだと思います。清道さんは、芸術の原点に立とうとしているのかもしれません。それをすぐ理解してもらうのは、難しいことでしょうが。『アルバ』も『アルメイダ』も、海の詩がもとになっています。『アルメイダ』のコピーに使った写真は、瀬戸内海の風景です。『アルバ』は、私の記憶がもとになっていますから、瀬戸内海そのものを詩にしたのです。“理想の海”とは、瀬戸内海そのものです。


「アルメイダ」の終了後、アンコール曲の「めぐりあい 秋」を合わせました。私の詩ですが、宮﨑文香さんの、いい曲だと思います。全員が合奏・合唱する、終演の彩りにふさわしい曲です。いずれは、春から冬までを〈四季篇〉としてまとめ、独唱歌曲などにして独立させるつもりです。そうすると、新たな“めぐりあい”が必要になります。宮﨑さんに、また書いてもらいたいと思います。


その宮崎文香さんが現れ、皆で協力し合って、当日プログラムを作り始めました。大量の枚数をコピーして持ってきていただいたのを、二つ折りしていきます。戸塚さんは香月さんの案内で、三軒茶屋の楽器屋さんに行きます。ヴァイオリンの調子が悪いので、東京の、いいお店を探していたのだそうです。演奏者同士が情報を交換できるのは嬉しいことです。


14時半からは「ムーヴメント」を合わせます。ピアノの森川あづささんが入ります。赤羽佐東子さんが、他のメンバーをまとめてくださるので、たいへん心強く思います。練習室の外にいても、特に打楽器の迫力ある音が聴こえてきます。

そうこうしているうちに、清道洋一さんが小松史明さんに依頼して作成した、『アルメイダ』の印刷物が届きました。私がkinko'sでコピーして作ったものとは異なり、4色カラーで、私の筆になる原詩が載っています。非常に美しい仕上りです。小松さんの実力が、よく表われています。


15時半から16時半まで、今井重幸先生の『青峰悠映』を合わせます。フルートの田中千晴さん、ファゴットの平昌子さん、それに大谷歩さんが、とても熱心に練習してくださいました。今井先生は、仕事先から駆けつけることになっていましたが、遅れますという御連絡をいただいています。失礼して、私は昼食を食べに出ました。


16時半からは、今日が仕事で来られない橘川琢さんに代わり、清道洋一さんの指揮で、“シャンソン組曲”を練習します。ピアノの並木桂子さんが合流します。食事から帰ってきますと、今井先生は、すでにお見えになっていました。『ピノッキアーナ』『風はつぶやく』『哀しみの海の滄さ』を、清道洋一さんの指揮で、楽器のみ合わせました。


17時半。すでに大半の方はお帰りになりました。花の上野雄次さんを交えて、『花骸-はなむくろ-』を合わせます。戸塚さんが入るのは初めてなので、手探りの部分もありますが、とにかく、1時間、めいっぱい練習しました。すでに声と楽器だけで世界ができているので、これに何を加えるか、上野さんは悩んでいます。しかし、きっといい舞台ができるだろうと、私は確信しています。迷いが出たとしても、それは上野さんらしい迷いになるはずです。

『花骸』の後で、打楽器や譜面台などを、3Fのホール、あるいは楽屋に移動させました。もう、リハーサルルームに

来ることはありません。こうして、ひとつひとつが、本番のために、確実に終わってゆくのです。


戸塚さんを案内して池袋のフォルテに行き、19時から20時まで、バンドネオンの生水敬一朗さんと「Venus4-6」を合わせてもらいました。この後の時間帯に、橘川琢さんと合流する予定です。私はフォルテで待機です。「Venus」の合わせが終わりました。かなり難しい曲のようです。20時半ごろ、池袋駅で橘川氏と合流しました。『1997年 秋からの呼び声』の差換曲をもらいました。私と戸塚さんで演奏します。「七角星雲」「光うた」「火の山」の三篇で構成される、組曲です。3つを合わせたタイトルは、まだ考えられていませんでした。帰宅後、『宇の言葉 七角星雲・光うた・火の山』とすることを、橘川氏と相談の上で決めました。「宇」とは、空全面を覆った天のこと。これ以上はない、大きな題名にしました。詠み手として、自分で考えた題にふさわしい表現ができるかどうか。それ以上に、一夜で何ができるか。やはり、不安です。

2009年9月28日月曜日

「10」へ;1

もう、トロッタ10への準備は始っています。
本日、電話で、あるいは直接会ってと、何人かの作曲家と話しをしました。改善と継続に向けて、努力をします。
演奏曲の最終決定は、10月10日(土)に行います。編成が決まれば、出演要請を行います。すでに何人かの出演者には了解を得ているので、ゼロからの出発ではありません。大半の曲もできています。
今年最後のトロッタへ、皆様、ぜひお運びください。

トロッタ9が終わりました

最後の「渋谷にて;7」は書けていません。また、本番の御報告もしなければなりません。「本番までの通信」も、3回で終わってしまいました。
いろいろと、反省の多いトロッタ9でした。しかし、とにかく終わりました。
お越し下さいました皆様、ありがとうございました。
また、関係の皆様、お疲れ様でした。
今日から、トロッタ10に向けて出発します。反省をしながら。「渋谷にて;7」も書きます。
今年の残りは、すべてトロッタ10に向けて力を注ぎます。他にも、例えば明後日からの「ユメノニワ」などあるわけですが、それらを含めて、トロッタ10へのエネルギーといたします。
よろしくお願いします。

2009年9月26日土曜日

渋谷にて;6

9時50分、ミュージックアベニュー渋谷に集合し、エレクトーンの大谷歩さん、ヴィオラの仁科拓也さんと、打楽器を移動させました。食事をしながら打ち合わせ。楽器の方々は12時集合の予定なので、それまで、『アルバ』での、エレクトーンと私の詩唱を合わせました。

12時から14時、橘川琢さん関係の曲です。シャンソン組曲を合わせていきます。続いて、『秋からの呼び声』でした。ただ、この日の話し合いにより、『秋からの呼び声』は、演奏を中止することになりました。ひと言では申せない事情なので、ここには書きません。しかし、こうしたことは起こり得る話であり、過去に何度も例があったでしょう。いつの日にか『秋からの呼び声』が復活することを祈ります。空き時間に、弦楽器と『アルバ』の合わせをいたしました。

14時から『ムーヴメント』です。外で待っていましても、大きな音が聴こえてくる、迫力のある曲です。-このように書きながら思いますが、2台ピアノのための曲を作ろうと、田中修一氏と西日暮里で話し合いました。トロッタ1の練習の後でした。それがエレクトーンと打楽器を交えた曲になります。ひとつながりの歴史が見えてきます-

15時から16時は『アルメイダ』です。清道洋一さんが指揮します。-また思いますが、皆さんの時間を調整していくことは、非常に困難です。先に時間を設定して合わせてもらうのではなく、皆さんの時間に合わせて調整していくのですから。トロッタでは、それがいいと思っていますが、再考する必要があるかもしれません。-この練習で、ほとんどの方は終了です。

17時から、フルートの田中千晴さん、ファゴットの平昌子さん、ヴィオラの仁科拓也さんで、清道さんの曲を合わせました。静かな、眠りに誘うような曲です。

18時半にエレクトーンシティを出まして、近くの喫茶店で待機。『秋からの呼び声』が中止になったので、どうするか、橘川琢さんと話し合いました。その結果、私の詩をもとにした別の曲と差し替えることになりました。この後、近所のkinko'sに行きまして、会場で配る、「アルメイダ」の清道版テキストを作成しました。

この日は、12時に、ビデオ作家の服部かつゆきさんが、撮影用のカメラを運び込んでくれました。また、宮﨑文香さんは、プログラムのための印刷を行ってくれました。音楽評論家の西耕一さんも、前日練習の時間や当日リハーサルの時間を問い合わせてくれました。帰宅後、そもそも帰りが遅かったのですが、深夜までかかって、翌日と当日リハーサルのスケジュールを作りまして、皆さんに送信しました。

2009年9月25日金曜日

渋谷にて;5

エレクトーンシティのLABO-4にピアノがあるのかどうか。9時40分に電話しましたら、やっぱりありません。急遽、ミュージックアベニュー渋谷に電話をかけ、部屋を予約しました。2時間分の予約です。わかりきったことですのに、どうしてこの疑問に気づかなかったのか。ピアノがあるものだという思い込みにあきれます。皆さんに連絡しました。今日は、宮﨑文香さんがエレクトーンシティに来てくださり、当日のプログラム作りについて、打ち合わせをします。印刷所でコピーなどをしていただくのです。その原稿を作ります。ところどころ、間違いがあります。詩集の校正をしようと、ここ数日、ずっと思い続けていましたが、かなわないままでした。この日になって、やっと、その作業ができました。ところどころ、間違いがあります。時間がなく、不完全なままですが、練習開始に間に合うよう、渋谷に向かいました。当日に配るチラシを持っていったので、今日もたいへんな荷物です。


13時、ミュージックアベニュー渋谷に集合しました。エレクトーンの大谷歩さん、ヴァイオリンの田口薫さん、ヴィオラの仁科拓也さん、チェロの香月圭祐さん、クラリネットの藤本彩花さん、ピアノの並木桂子さん、ヴォーカルの笠原千恵美さん、作曲の橘川琢さんで、シャンソン組曲を合わせます。続いて、『秋からの呼び声』。これには私も加わります。時間帯の最後に、『アルバ』の、笠原さんの歌を中心に練習しました。とにかく狭い部屋で、この日は暑く、エレクトーンも数台置かれていて、皆さんには御苦労をおかけしました。15時に終了です。


この時間で人と場所を変えます。仁科さんとエレクトーンに移動します。16時、清道洋一さん、中川博正さんに来ていただき、私と『アルメイダ』の詩唱を合わせました。演劇性も入りますが、あくまで音楽作品です。音楽としての効果を求めます。宮﨑文香さんがお越しになって、プログラム印刷の打ち合わせをしました。これで1時間。男声同士のかけあいは始めてなので、私は楽しみです。


17時。花生けの上野雄次さんがお越しです。会場を見せてもらいます。この時間にいた全員が参加しました。人口リバーブの「夢響(ゆめひびき)」という装置で、どんな響きを作れるのか、確かめました。


17時半。上野さん立ち合いで、橘川さんの『花骸』を合わせます。なかなか緊張感のある曲になっていると思います。いろいろとアイデアを出し合いました。なお何かできないか。本番までに工夫します。


18時半中川さんに手伝っていただき、この後の『ムーヴメント』のため、打楽器をミュージックアベニュー渋谷に移動させました。演奏者の集合は20時なので、楽器の番しながら、仕事です。20時、楽器を部屋に運びこみ、後は演奏者におまかせして、再び仕事です。21時、楽器を片づけて帰りました。帰宅後は、明日のスケジュール作り。皆さんの時間を合わせるのは、難しいものです。


渋谷にて;4

4日目の練習については、その日のうちどころか、翌日の御報告もできませんでした。早く終わったはずですのに。とりあえず、事後報告いたします。


練習4日目となり、この日から、本番会場であるエレクトーンシティ渋谷での合わせです。

9時30分、ミュージックアベニュー渋谷で仁科拓也さんと待ち合わせ、打楽器をエレクトーンシティに運ぶ手はずでした。ところが、部屋を出る時になって財布が見当たらず、大騒ぎです。結局は鞄の中に入れてあったのですが、譜面台を6本も下げ、一報の鞄は楽譜でいっぱい、仕事をしようとMacintoshも持っているので、容易に探せません。結局は見つかったのですが、大きなことがある場合は、たいていこういうことになりがちです。心のうちが反映されています。


エレクトーンシティに着くと、チェロの香月圭祐さんにまず会い、4Fのリハーサル室には、すでに、エレクトーンの大谷歩さん、ソプラノの赤羽佐東子さん、ヴァイオリンの田口薫さんがお待ちでした。ヴォーカルの笠原千恵美さんが、続いてお子様とお越しになりました。始めの合わせは、『アルバ』です。10時から11時まで。1時間では、なかなか全体を通すことができません。


続いて11時から、『アルメイダ』です。作曲の清道洋一さんを始め、フルートの田中千晴さん、オーボエの今西香菜子さん、クラリネットの藤本彩花さん、ファゴットの平昌子さん、ピアノの徳田絵里子さん、詩唱の中川博正さんも集まります。練習室に、人がいっぱいです。赤羽さんの歌が、とてもドラマティックです。清道さんらしいメロディです。


12時から13時まで、田中修一さん作曲の『ムーブメント』です。打楽器の星華子さんはお休みですが、赤羽さんと大谷さんに、ピアノの森川あづささんを加えて合わせます。他の方は休憩です。


再び皆さんに集まっていただき、13時から14時、今井重幸先生をお迎えして、シャンソンの3曲を合わせます。ピアノは並木桂子さん。橘川琢さんもお見えです。清道さんと橘川さんの編曲は、それぞれ、作曲者の個性が出ています。もちろん、作曲者の今井先生が立ち会いますから、こうした方がもっとよくなるという御意見をいただきました。


ここで多くの方がお帰りになりました。14時から15時は、フルート、ファゴット、エレクトーンによる、今井先生の『青峰悠映』です。ちょうど終わった直後、15時半ごろ、音楽評論家の西耕一さんが、お土産持参で陣中見舞いに訪れました。しかし、皆さんはほぼ帰ってしまったので、残念でした。渋谷駅前で西さんと別れ、私は近くの喫茶店で仕事。大谷さんはそのままエレクトーンで作曲を続けます。この間に、翌日の夜、『ムーヴメント』の合わせの部屋を、ミュージックアベニュー渋谷に予約するなどしました。音量が大きいので、時間を遅くしてもらえないかという先方の希望で、演奏者に再調整する必要が生じました。


18時。エレクトーンシティに引き返し、大谷さんと『アルバ』冒頭の、詩唱とエレクトーンの演奏を合わせました。エレクトーンらしい音色にあふれています。


鍵をかけて帰ります。帰宅後、阿佐ケ谷にて今井先生と会い、シャンソン『風はつぶやく』の録音テープを受け取りました。何度か歌われた時のテープで、参考にしてほしいとのことです。

明日のスケジュールを作るうち、たいへんなことに気づきました。明日の早い時間は、エレクトーンシティのリハーサル室が取れず、LABO-4という部屋での合わせです。しかし、ここにピアノがあるのでしょうか? もちろんエレクトーンはありますが、うかつなことに確認していませんでした。明日の一番は、シャンソンと『秋からの呼び声』の合わせですのに。部屋の変更があり得ることを皆さんに予告した上で、スケジュールを送りました。

2009年9月23日水曜日

渋谷にて;3

昨日は、明るいうちに帰ることができたのですが、結局は、御報告が今になっています。書けなかった直接の原因は、疲れで眠くなってしまったことですが、どういう時間の使い方をしたのだろうと思います。プログラム作りなど、できていないことが多くあります。本番にますます近づいている今、どこかで行動パターンを切り換えなければ、永遠にできないだろうと思います。

ミュージックアベニュー渋谷に、午前10時集合です。エレクトーンの大谷歩さん、ピアノの森川あづささん、打楽器の星華子さんの3人に、作曲の田中修一さんが加わって、『ムーヴメント』を楽器だけで合わせました。トロッタ3で初演した曲を、エレクトーンシティ渋谷公演のために編作しました。大音量で、たいへんな迫力です。

12時。作曲の今井重幸先生と入れ替わり、『青峰悠映』の合わせです。フルートの田中千晴さん、ファゴットの平昌子さんがやってきました。フルート、ファゴットに、もともとはハープという編成ですが、今回は、ハープのパートをエレクトーンが演奏します。ただし、せっかくエレクトーンを使うのですから、ハープだけではない、さまざなま楽器の音色を試されていました。

13時半をめどに、続いて練習します、シャンソン組曲関係の方々が集まり始めます。ピアノの並木桂子さん、ヴォーカルの笠原千恵美さん、バンドネオンの生水敬一朗さん、オーボエの今西香菜子さん、ヴィオラの仁科拓也さん、クラリネットの藤本彩花さん。そして、今井先生のシャンソンを編曲しました、橘川琢さん、清道洋一さんもやって来ます。

14時、練習開始。橘川さん編曲の『哀しみの海の滄さ』『風はつぶやく』、清道さん編曲の『ピノッキアーナ』です。原曲のメロディを生かし、橘川さんと清道さんが、お二人らしい曲に仕上げていました。ピアノやアコーディオンが伴奏するシャンソンもいいと思います。しかし今回は、トロッタらしいシャンソンを作り上げようと思いました。笠原さんの話では、以前、トロッタを聴きに来てくださったお客様が、一曲くらい、手拍子できるような曲を入れてほしいとおっしゃったとのこと。このシャンソン組曲は、そうなっていると思います。

本日で、ミュージックアベニュー渋谷における全体練習は終わりました。

2009年9月22日火曜日

渋谷にて;2

どうも帰りが遅くなり、皆さんに連絡メールを出すなどしていましたら、この報告を書くのが翌朝になってしまいます。一週間前練習二日目について、簡単に御報告します。

14時半、打楽器の星華子さん、作曲の清道洋一さん、詩唱の中川博正さんが浅草田原町に集まり、一週間レンタルをした打楽器を借りて、搬入をしてくださいます。私はその時間、プログラム作りを進めていましたが、やっと16ページに収まるかという段階です。打楽器搬入の方々と15時半を目標に、ヤマハミュージックアベニュー渋谷に集合しました。

16時、エレクトーンの大谷歩さん、フルートの田中千晴さんが来ました。予約してあった部屋にて、星さんは楽器を組み立てつつ、大谷さん、清道さんと打ち合わせながら練習。私と田中さん、中川さんは、急遽、別の部屋を借り、橘川琢さんの『花骸-はなむくろ-』を合わせました。これは合う合わないより、まず楽しまなければおもしろくない曲です。演劇的ですが、何とか音楽にしていきたいと、個人的には思います。

17時、ヴィオラの仁科拓也さん、オーボエの今西香菜子さん、クラリネットの藤本彩花さん、ファゴットの平昌子さん、ピアノの徳田絵里子さんが加わりました。17時半、ソプラノの赤羽佐東子さんも加わりました。『アルメイダ』を合わせます。18時15分まで。ここで大半の方にお帰りいただき、赤羽さん、大谷さん、星さんで『ムーブメント』を合わせます。ピアノがないので、難しいところですが、23日(水)はこの曲を朝一番に合わせますので、予習をしておきます。

19時、『アルバ』です。こう書きながら、音楽になっているかと自問自答します。『アルメイダ』に即興部分があります。詩唱の中川さんが語っており、その間に、他の人は思い思いの演奏をします。私は声の即興です。何をしてもいいのですが、中川さんの語りを、私は聴いているでしょうか。闇雲な即興はおもしろくありませんし、曲の真意を汲んでいません。人の音を聴くことです。

練習場を出た後、田町に回りまして、作曲の橘川琢さんと打ち合わせです。練習場に皆さんのスケジュール一覧を忘れてしまい、橘川さんが楽譜をコピーしている間、渋谷に引き返してまた戻ってくるなどというトラブルがありました。前回も、練習場に楽譜を置き忘れてしまいました。そういえば、トロッタ5の時、本番直前に、本番会場と別の場所で合わせたのですが、そこに楽譜を忘れてしまい、開場されているのに取りに行くなどということがありました。本番10分前のことです。しかもその曲が、一曲目でした。私物の管理はしっかりしなくてはいけません。することが多くなり、人もまた多くなればなるほど、いろいろな対応で、細部がおろそかになってしまいます。注意したいと思います。

2009年9月21日月曜日

渋谷にて;1

“一週間前練習”の初日でした。いよいよと思うと、物事が手につきません。日々の仕事を進めなければなりませんが、なかなか進まないのです。
15時前、渋谷駅で、エレクトーンの大谷歩さん、作曲の宮﨑歩さん、清道洋一さんと落ち合い、さらに役者の中川博正さんと合流して、ミュージックアベニュー渋谷へ。16時まで打ち合わせです。16時から練習開始。まず、清道さんの『アルメイダ』の、エレクトーンの音色を確認していきます。17時から、フルートの田中千晴さん、オーボエの今西香菜子さん、クラリネットの藤本彩花さんが、17時半にはソプラノの赤羽佐東子さんが参加。この人数で、できる限り作っていきました。19時からは、大谷さんの『アルバ』でした。

帰宅後、小松史明さんによる、『アルメイダ』の印刷原稿を確認しました。たいへんにすばらしい出来です。この裏面には、私の原詩が載ります。清道さんによる演奏用のテキストは、清道さんらしい戯曲といった趣ですが、これは私が作ったA3判の印刷物に載りまして、この二種を合わせて配布します。

この報告は、昨夜中に行わなければならなかったのですが、翌日の練習予定を作って皆さんに送ったりしていましたら、眠くなってしまい、仕事もできずに寝てしまいました。「詩の通信IV」の第4号の発行が今日なのですが、何も書けていません。書ける自由を得ているのですから、書こうと思います。

2009年9月19日土曜日

一週間練習の始まり

日曜日となり、とうとう本番一週間前になりました。今日、9月20日(日)から、エレクトーンの大谷歩さんを加えて、一週間練習が始ります。若いころの記憶ですが、一週間練習などというと、たちまちプレッシャーになってしまった私がいました。芝居の裏方として、一ノ関など、東北地方を回った時のことです。一週間にならなかったと思いますが、もう東京に帰ってこられないかも、という気持ちになりました。まだ東北新幹線がなく、東北本線で行きましたが、車窓の風景を今でもはっきり覚えています。特別に見えたということ自体、プレッシャーを感じていた証拠です。帰り道、東京が近づいてくるのが、一駅一駅、待ち遠しかったことも覚えています。東京に、ホームシックを感じていたのです。これからの一週間は、旅だと思います。トロッタという名前の。どこまで楽しめるか。御報告いたします。

2009年9月18日金曜日

プログラムを作っていますが

すでにチラシに書いてあることですが、曲紹介や作曲者、演奏者の紹介、それに詩をまとめて、当日プログラムを作っています。これがなかなか難しく、うまく収まってくれません。一枚の用紙を二つ折りにし、裏表にコピーして中綴じにします。ページは8、12、16という増え方をします。目下、14ページほどになっていて、12にするには遅く、16にはまだといという状況です。もっと早く作っておけばということですが、やはり、無理でした。

あと9日です

今日は9月18日(金)です。本番まで残り9日となりました。明後日、9月20日(日)には、山口市からエレクトーンの大谷歩さんが上京されます。いよいよ一週間前の練習が始ります。

一昨日の9月16日(水)、エレクトーンシティ渋谷と、三日間の練習場所に予定している、ミュージックアベニュー渋谷に行って、打ち合わせをしてきました。舞台進行上のことをいろいろと打ち合わせました。新宿で通っているレッスンの後、渋谷に回りました。

昨日の9月17日(木)は、プログラム作りを進めました。打楽器のレンタル手続きも、演奏者の星華子さんが済ませてくれました。作曲者から受け取ったままになっていた楽譜を整理し、製本しました。断片的にものごとを進めていますので、総合的な判断がなかなかできません。しかし、確実に間違いのないようにします。

2009年9月16日水曜日

こんな文章を読みました

どちらも、詩人でアイルランド伝統音楽のフルート奏者、キアラン・カーソンの『アイルランド音楽への招待』(守安功・訳/音楽之友社)から引用しました。カーソン自身が引用しているので、引用の引用です。

「コンコルド広場では好きにしてていいから、とにかく、午後四時にエッフェル塔の三階で会いましょう」。一つの曲を通して演奏することは、ニューヨークからサンフランシスコに旅するようなものである。車に乗った二十世紀の音楽家なら、目的地への最短距離を行くために高速道路を走ってゆくだろう。でも、本物のバロック音楽の演奏家なら、道すがら何度もちょっとした寄り道をしながら、眺めのいいルートを選ぶことだろう。どの道を行くかには無限の可能性がある。ということは、ニューヨークからサンフランシスコに数えきれないほど何度も行ったとしても、二度と同じ道を通ることなく、しかも、そのたびに新たな楽しみを発見することができるということだ。
ヴィクター・ランジェル=リベイロ『バロック音楽』

私のこれまでの、アイルランドの音楽を収集研究してきた経験から、次のことをここで明言することができる。楽譜化されていないある曲について徹頭徹尾同じ二つの演奏を聴くことはまずない。かたや、一つの曲が五十もの異なる楽譜となった例もある。曲の構成についての綿密な分析や、それらの曲の歴史や変化推移についての知識を動員して初めて、極めて異なる二つの曲が、実は元々は同じ曲だとわかることもままある。
ジョージ・ペトゥリー『アイルランドの古い音楽の譜例集』

以上です。
この文章を通じて、先日、テーマにしました、詩と音楽の関係性について、考えたのでした。
始めの引用文の「コンコルド広場」が、私の詩です。「エッフェル塔」が、演奏される曲であり、その時に用いられる、変形しているかもしれない詩です。詩が生かされるなら、どのような道筋を通っても、作曲家が楽しめばそれでいいのではと思いました。道筋にこだわることはない、とも。

2009年9月15日火曜日

トロッタの作業など

もろもろの発送作業など、ひとりでしていますが、何とかシステム化して共同作業にし、合理的にできないかと思います。楽をしたいのではなく、非合理的な点を改善して、少しでも練習や宣伝にあてたいと思うのです。次回からのため、合理化案をはかってみます。ただ、わかっているのは、私は、合理化に向かない人間であり、性格だということです。向いている性格なら、とうの昔に、トロッタはシステム化されていることでしょう。経済のことも含めて、不得手です。近代的でないのがトロッタの性格だといえます。いや、私の性格ですね。トロッタは私のものではなく、参加している全員のものですから、そしてお客さんのものでもありますから、非合理的性格を、人に押しつけるのはよくありません。

本番前1週間の練習は、23日(水)からの4日間、会場であるエレクトーンシティ渋谷で行います。前半の20日(日)から22日(火)は、渋谷駅東口方面の、ヤマハミュージックアベニュー渋谷で行う予定です。時間を調整して、効率よく、こちらは人の時間を使うのですから、合理的に行いたいと思います。そうした調整で、ここ数日、頭を使っています。私はプロデューサーではないといっていますが、こうしたことは私がするしかありません。こうしたことを通じて、いろいろな細かいことがわかってきます。初参加の方は、お目にかかって、打ち合わせなどさせていただいているのですが、どうしても、顔と名前と楽器が一致するまでに時間を要します。それを覚えるのが、制作の作業を通じてというわけです。お恥ずかしいのですが、メールの文章はフルネームで書くこと。そうしないと、なかなか頭に入ってくれません。記憶力に優れた人は、こんな自信のないことをしなくていいでしょう。

2009年9月14日月曜日

本番前1週間のスケジュール調整中です

トロッタ9では、エレクトーン奏者の大谷歩さんが、山口市から上京されて演奏されます。本番前の1週間、滞在してくださいますので、特にエレクトーンの曲が多いこともあり、1週間で仕上げていく態勢です。1週間、全員が出られるわけではもちろんありませんが、その7日間に気持ちを集めていきます。このスケジュール調整がたいへんです。人数分、さらに曲の数、1週間という時間。これを調整していかなければなりません。皆さんもたいへんだと思います。よろしくお願いします。

蝉が窓の外で鳴いています。私は、秋なのに、いつまでも鳴いている蝉のようです。

昨日、座・高円寺に行きまして、最新のトロッタ通信と一緒にチラシを置いてきました。しかし、前に置いたチラシがほとんど減っていません。どうしてだろうと思います。初めのころはすぐになくなっていて、怖いほどだったのに。あまりお客さんが入っていないのでしょうか。当然ですが、不特定多数の方が持っていくものですから、お客さんがたくさん来ないと、チラシを持っていく人も少なくなるわけです。

こけら落としは、井上ひさし氏の『化粧』という、知られた出し物でした。年配の方が多かったようですが、大勢の人が足を運んでいました。疑問を抱いたことは確かです。こけら落としという、劇場にとって一度しかない機会に、旧作の、評価の定まった作品を持ってくるとは、どういう意味があるのだろうと。なぜ、意欲的な新作を問わないのか。戯曲家、演出家、役者など、意欲を持った人はいくらでもいると思います。なぜ、年配の作家と役者の、独り芝居なのか。わかりません。たくさん出してあげればいいのではないでしょうか。私の考えが、こうしたことと対極にあることは確かです。

2009年9月13日日曜日

トロッタ9の詩篇を暫定公開

トロッタのサイトを更新しました。トロッタ9で用いられる詩を、暫定公開したのです。一部、確定できないものがありますので、完全ではありません。記号や断り書きなど、直したい箇所がありますが、手つかずです。御容赦ください。

「トロッタの会」の会

mixiに、〈「トロッタの会」の会〉というコミュニティを作ってみました。御興味のある方は、御参加ください。せっかくmixiに加入しているのですから、もっと早く作らなければいけなかったと思います。しかし、この時期になってしまいました。サイト、ブログの更新だけでもたいへんなので、手が回りませんでした。しかし、少しでも可能性のあることは、最後まで試します。

今日は、比較的長い詩を書きました。12月に、ある演奏会で初演するためのものです。作曲家に、少しでも早く曲を書いてもらうため、詩を早く渡したいと思います。タイトルは「冬の鳥」にしました。すでに送ってありますが、現在の形でいいかどうかは、まだわかりません。先日来、書いています、詩と音楽の関係がありますから、詩としてはいいとしても、作曲上の問題があるでしょう。作曲家としても、目前にトロッタを控えていますから、まだ12月の曲まで気持ちが回りません。私は回ったのかというと、トロッタも何もなく、純粋に詩として書きましたので、作曲家にくらべると、少しは制約から自由だったと思います。一応は、女声による歌と、男声による詩唱に、書き分けました。

トロッタではありませんが、「上野-谷中 アートリンク2009」のアートマップができたというので、谷中まで取りに行きました。「扇田克也+木部与巴仁〈ユメニニワ〉」、「ボッサ 声と音の会vol.5」の告知が、1ページ目に載っています。すぐ上は国立西洋美術館の「古代ローマ帝国の遺産」展、さらに上は上野の森美術館の「聖地チベット」展、横は東京国立博物館日本藝術院東京都美術館の告知と、一等席に座った気分です。すごくアナーキーです。おそれいります。アートマップは、トロッタ9の会場で配布されます。

2009年9月12日土曜日

「本番までの通信.3」をアップしました

サイトに、「本番までの通信」第3号をアップしました。印刷したものは、「座・高円寺」のカウンターに置きます、「トロッタ通信」に入れています。間が空いてしまっているので、本番まで、さらに書きます。ひとまず、お読みください。


*「トロッタ9 本番までの通信.3


街 焼き尽くさば

瓦礫なす 荒れ野なり

見たし と思へど

街のさま すでに

瓦礫なりや

われ ひとともに

あてどなく

往き来する か


心 乱る

ひとり居(い)に 交わりに 

問へど その故 くらし

身を割く

ひびわれの道に似て

割けと ひたすらに

乱る か


白々明けの街に 

寂しき 靴音響く

あてどなし 影を追ひ

ひたすらに 往く 

山となり おびただしく積む

心写しの 瓦礫

疾風(はやて)たち 白き頬に

ひと筋の血 にじむ

あざやかなり 赤


田中修一・作曲 木部与巴仁・詩

MOVEMENT』(原詩「亂譜」)


 トロッタ9まで、残り2週間となりました。2週間後には、本番です。最低でもあと2回、何としても「本番までの通信」を出そうと思います。

 ここに掲げました詩は、田中修一さん作曲の『MOVEMENT』に用いられる詩「亂譜(らんふ)」です。これは田中氏が何度も語っていることですが、2台ピアノのための曲をと私が求めまして、私も彼も、2台ピアノの演奏にふさわしい作品をめざして創りました。人によって、ピアノを2台使う必要を疑問視する意見もありましたが、私はこれでいいと信じます。仮に、その疑問が正当であったとしても、人には実験をする自由があります。そのことに限らず、人の熱意に水をさすような態度は、尊敬できるものではありません。トロッタ3で初演された曲であり、2年が経ち、トロッタ9でエレクトーン版として生まれ変わることになりました。

 新宿駅西口方面に、高層ビル群があります。人の叡智を集めて造られた建築物ですが、温かみを感じるでしょうか。人の姿が見えません。大勢の人が中にいるのですが、外部の者はまったく拒絶されて感じます。そのようなものを造るのが人の叡智だとは、思いたくないのが本音です。だらしなくていいから、人間らしくありたいと思います。

 トロッタの会に限らず、音楽や文学は、人間らしさを求めるものでしょう。コンピュータ音楽が人間らしいかどうか。今は判断できません。この文章もコンピュータで書き、コンピュータでお読みいただくのですから。現代人の生活から、コンピュータを全面的に排除してしまうことはできないと思っています。では、どうするか? 考え続けてまいります。

 高速鉄道、高速飛行機、高速船。どれも便利であり、もちろん私も利用しますが、速ければいいというものではないと思います。どれも外部を遮断し、冷たい外見をしています。人の能力を大幅に超えるものは、おおむね冷たくなるようです。そうした乗り物で身体をいためた例を見聞きします。私自身、高速鉄道から降りた時、非常に疲れた記憶があります。

 このような考えを表わしたくて、「亂譜」を書いたのではありません。しかし、高層ビル群に瓦礫を感じたことは確かです。ニューヨークで起きた同時多発テロ事件で、まさに現代の叡知から生まれた高層ビルが、瓦礫になってしまいました。この詩を、その光景に重ねて詠むことも不可能ではありません。現代人は知ってしまいました。あのような建物を造れば、いつの日か、瓦礫になってしまうことを。戦争による惨状にも、同じことがいえます。

 この曲を歌うのは、ソプラノの赤羽佐東子さんです。赤羽さんには、田中修一さんの曲を、多く歌っていただいています。赤羽さんの声で瓦礫が広がる都市の光景を歌うとは皮肉ですが、真の凄みは、美しさを通してこそ表現されるのではないでしょうか。

 皆様のご予約を、お待ち申し上げます。  〈木部与巴仁〉

2009年9月11日金曜日

再び、数日のことなど c)

本日、扇田克也さんから、新作ガラス展「GLASS WORKS BY OHGITA KATSUYA」の案内が届きました。会場は、愛媛県の新居浜市の日野画廊です。私が生まれた県ですが、新居浜には、行った記憶がありません。行っていると思いますが、覚えておらず、町の記憶がないのです。扇田さんとの会も、間近です。新作詩を、整理していかなければなりません。「ガラスの国」と、「ユメノニワ」を、まず発表予定です。それ以外に、日々の詩を更新し、ボッサで発表する予定です。

また、今日は先日も書きましたが、メゾ・ソプラノの松本満紀子さんが行うリサイタルの当日プログラムを、このような線でどうでしょうかと、松本さんに届けました。一昨日の夜から、この作業にかかりきりです。いえ、日曜日にはプログラムに使う風景写真を撮りに、世田谷の砧公園に出かけもしました。トロッタとボッサの本番が近く、もうすでに迫っていますので、なるべく早く仕上げて、自分のことに集中したいのです。幸い、松本さんには、ほぼよいというお言葉をいただきました。後は、直しを受け取って、完成させるだけです。

今回は、エレクトーンの大谷歩さんが上京し、一週間滞在して、集中して曲を仕上げることになっています。エレクトーンシティ渋谷の練習室は、可能な限り押さえています。そろそろ、練習の具体的な時間割を決めていかなければなりません。また、トロッタの当日プログラムも、そろそろ編集にかかる必要があります。細かな作業がいくつも待っています。そのためにも、日々の糧を得るための仕事は、効率よく片付けてゆく必要があります。昨日は、雑誌「FIGARO JAPON」に執筆する本紹介のため、三冊の本を読みました。一日じゅう本を読んでいるのですから、端から見れば気楽な感じですが、これはけっこう苦痛です。WEB版FIGAROは、書評したくて自分で選んだ本ですが、本誌のための本は、編集部からあてがわれるわけですから。それに、世の中には読みたい本というのは、それほどありません。極論すれば、ありません。書かなければ。自分の詩、文章こそが大事です。つまり、まだ書かれていないものを、大切に思います。ということは、たった今、この世にはないというわけです。

再び、数日のことなど b)

8日(火)の深夜、日付も変わった午前1時。作曲家の橘川琢さんが阿佐ケ谷駅にやって来ました。楽譜を届けてくれたのです。3時ごろまで、駅前のマクドナルドにて、コピーした楽譜を整理しました。そこで今後のトロッタについてなど、話し合いました。問題はいろいろとありますが、とにかく前向きに、詩を書き、作曲をし、トロッタを開き続けていくということです。彼はインターネットカフェに行って、夜が明けるまで過ごしたようです。

先日書きました、詩を変えるということについて、いろいろ考えました。態度は変りません。作曲家は、私の詩を変えてくださってけっこうです。ただ、変えるとはどういうことだろうと思いました。詩文がメロディに乗らない。リズムが違う。私の詩より、もっと作曲家自身の音楽世界に近づけたい。いろいろ理由があるでしょう。答えは出ていません。これからも、変えてくださいというでしょうが、作曲家の考えについては、想像をやめないだろうと思います。そしてトロッタなどで、音楽として発表する限り、それは最終的に、作曲家の作品だと、私は思っています。

その基本にある考え。モーツァルトでも誰でもいいのですが、ある著名作曲家A氏の作品が演奏される時。人は、モーツァルトの名前で聴くか、A氏の名前で聴くでしょうか? どちらで聴いてもいいわけですが、モーツァルトの方が多いのではないでしょうか。しかし、聴いているのはA氏の演奏なのです。B氏の演奏とは、決定的に違っているでしょうし、また違っていてほしいと思います。この場合、B氏とくらべてA氏が優れているとか劣っているとか、あまり思いません。A氏のよさを聴きたいと、ずっと思ってきました。

このたとえでいうと、詩は、演奏のはるか後方にあります。演奏者の演奏を聴いて、作曲家の感性を聴き取って、できれば詩を聴いていただきたいと思います。しかし改変されている場合、私の詩は、さらにずっと後方にあることになります。もうひとついいますと、私自身、自分の詩を詠んだとしても、それは作曲家が譜面に書いた詩を詠んでいるつもりです。楽器の方と一緒なので、自分のメロディやリズムで詠めません。従って、自分の詩を、他人の詩として詠もうとしています。その方がおもしろいと思っています。

再び、数日のことなど a)

去る7日(月)、今度は間違いなく「詩の通信IV」の第3号を発行しました。目下、発行部数は12です。トロッタ関係のことも書いていますので、「後記」の全文を引用し、若干の補足をします。もし、この内容に御興味をお持ちの方がおられましたら、「詩の通信IV」の御購読をお申し込みください。

《後記》実家から、子どものころのアルバムが届きました。生後ひと月にならないころから、小学校低学年ごろまでの写真です。チロリアンハットのような帽子をかぶった写真が多いです。頭髪の量は変りません。三歳前後がいかにも子どもらしく、無心な表情をして、可愛いと思います。小学校に入ると、表情が今と同じで、もう駄目です。この後は、ひたすら人生を生きていくだけです。「詩の通信」を出したり、トロッタの会を開いたり、いろいろしているわけですが、これ以上、大人になる必要はありません。三歳のころに戻りたいと思います。私は左瞼に傷があります。家の中を走り回っていて、折り畳み式のミシン台が開いている縁にぶつけました。目の高さが、ミシン台くらいだったのです。何となく記憶があります。この傷を常に思い出すことにします。第九回トロッタの会が近く、プレッシャーがかかってきました。日々の仕事がありますが、トロッタに向かう気持ちは、仕事と正反対に位置します。非情に苦痛です。従って、両方の作業能率があがりません。そうはいっていられないので、無理にでも進めています。こんな時、三歳の私でいたいと思うのです。今日は、詩唱として参加する、俳優の中川博正さんと練習をしました。声を出すと安心します。普段のトロッタでは、楽器の演奏をよく聴こうと心がけています。今回は、中川さんと共演する曲が二曲あるので、彼の声を聴こうと思います。ひとりでしているのではない。他人とする楽しみを確認したいと思います。ひとりじゃないと思えば、トロッタのプレッシャーも、楽しみになることでしょう。次号は、二〇〇九年九月二十一日(月)発行予定です。二〇〇九年九月七日(月)



これが、子どものころの写真です。本番を控え、ただいまの心境を反映している、不安そうな顔。別の私といっていいのですが、共感します。

2009年9月8日火曜日

詩唱の練習

トロッタ9から参加してくださいました、俳優の中川博正さんと、詩唱の練習をしました。ひとつの課題として、以前から抱えていたことです。朗読といい詩唱といい、男声は、これまでずっと、私が担当してきました。他の人が詩唱をしたら、どうなるだろう? さらには、これまで私が詠んできた詩を、他の男声で詠んだ場合、どうなるのか? まったく異なる声ですから、お客様には違って受けとめられ、違う人間が詠むのですから、解釈も違うものになります。私の解釈に沿って詠んだとしても、違う表現になるでしょう。肉体が違いますし、人の歴史が違いますから。そこに期待をしてきたのです。

中川さんは、私と詠み分けます。私の詩が、違った男声で詠まれていきます。仮に、その詠み方は違うのでは? と思っても、自分の考えを押し付けたくありません。私と解釈が違えば違うほど、おもしろいと思います。一応は考えを伝えますが、その先は、おまかせでいいと思っています。作曲の方々に、私はこれまでずっと、その態度で通してきました。この詩はこういう意図で書いたから、こういう音楽にしてほしい、ということは一切いっていません。一言一句変えないでほしいともいっていません。むしろ、どんどん変えてほしいといっています。

清道洋一さんの『アルメイダ』では、私が書いた詩は、ほとんど原形をとどめなくなりました。清道さんによるテキストが、相当の分量を占めます。それでいいと思っています。清道さんは、私の詩に触発されて、自分でテキストを書いたのですから。私の詩がなければ、彼は書かなかったわけです。トロッタ10では、田中隆司さんが、やはり同じような手法で、私の詩を変形させました。3つの詩を一曲にまとめた結果、完全に田中さんの詩になりました。私自身、その詩はいいなと感じ入りました。実は、私が書いた詩の一行なのです。共同作業のおもしろさが現れました。

2009年9月6日日曜日

チラシを置いた場所です

トロッタ9のチラシを置かせていただいている場所です。
チラシを置くというのは、確実な宣伝方法とはいえないかもしれません。あくまで、見つけて、手に取って、持って行ってくださる方々の意志にかかっていますから。しかし私自身、街で手にしたチラシに大きな影響を与えられてきましたし、今でも、よくできたチラシには見入ってしまいますし、行かなくてもチラシの内容は記憶にとどめます。ですから、チラシにはできるだけ手をかけたいと思っているのです。

エレクトーンシティ渋谷(トロッタ9の本番会場です。渋谷駅南改札から徒歩5分)

ヤマハ渋谷店(道玄坂の中ほどにあります。人通りは多いのですが、並木がきれいです)

ヤマハ銀座店(有楽町駅に至近です。現在は仮店舗で、新ヤマハ銀座ビルは来年2月openです)

ヤマハ池袋店(池袋駅東口から徒歩4?5分。ここも繁華な土地で、出店傾向がわかります)

ヤマハ横浜店(横浜駅西口から徒歩5分。横浜のお客様にもトロッタを意識していただければと思います)

古書ほうろう(千代田線千駄木駅の近く。イベントをしばしば開催しておられます)

谷中ボッサ(谷中のカフェ。トロッタ9の直後、「ユメノニワ」展と「声と音の会vol.5」でお世話になります)

座・高円寺(高円寺駅最寄りの劇場。劇場に入って左手のカウンターにトロッタのスペースがあります)

古書往来座(東京音楽大学のそばにある古書店です。明治通り沿い。もとは池袋芸術劇場にありました)

ライブスペース奇聞屋(西荻窪駅の近く。トロッタの練習などでお世話になっています)

フライングブックス(渋谷駅に近く、東急文化会館の裏手、渋谷古書センター2Fです。イベントを行っています)

古書音羽館(西荻窪駅北口、東京女子大学方面。音楽や演劇・映画関係の本が充実)*サイトはありません

よるのひるね(阿佐ケ谷駅北口にある、お酒やお汁粉もある喫茶店です)

百年(吉祥寺の東急百貨店そばにある古書店です。イベントを行っています)

ミッテンヴァルト(ミッテンヴァルト・レーベルからは、邦人作曲家の作品集を発売しています)

Ben's Cafe(高田馬場駅最寄りのカフェ。オープンマイクの朗読会などを行い、国際的な雰囲気です)

2009年9月3日木曜日

数日のことなど c)レッスンでした

毎週水曜日は、声楽のレッスンです。イタリア歌曲を勉強していまして、今はトスティを歌っています。今月は“L'ultima canzone(最後の歌)”です。ここに書くほどうまく歌えるわけではありません。詩唱と直接関わるわけではありませんが、私にとって大切な場であることは間違いありません。ひとつは、継続すること。感情をコントロールして表現する確認。レッスンの大切さは、ここに書き尽くせないほどです。本当は、歌ですから、私が舞台で歌えるように筋道をつければいいのですが、お聴かせするほどのものでしょうか。といいながら、トロッタ5では一度、田中修一さんの『遺傳』を歌いました。橘川琢さんの個展「花の嵐」では、『春を呼ぶ歌』を歌いました。うまく歌えません。しかし、先に書いた、とにかく歌いたいという気持ちになれば、それは私の表現として、許されると思っています。問題は、その時々に、とにかく歌いたい気持ちになったかどうかです。その点では問題があります。

先日、上野雄次さんのはないけ教室がありました。橘川さんが参加されたそうです。トロッタ9で「花骸-はなむくろ-」があります。作曲をする、刺戟を求めたのでしょう。共同作業を続けている上野さん自身への共感が、もちろんあってのことでしょう。実体験が、どう音楽に反映されるか、楽しみです。

ここに掲げたチラシは、御覧のとおり、メゾ・ソプラノ松本満紀子さんのリサイタルを告知するものです。私が作りました。作曲家、田中隆司さんを通して、松本さんに依頼されました。松本さんの歌は、田中さんのリサイタルで初めて聴かせていただきました。私が注目するのは、柳田國男の『遠野物語』から採った散文、「寒戸の婆」の楽曲化です。リサイタルで聴きましたが、散文をこんなふうに歌にできるのかという思いがありました。トロッタもしていることですが、詩唱ではなく、こちらは歌になっています。田中隆司さんは、トロッタ10のために『捨てたうた』を書いてくださっていまして、その譜面は、すでに出演者に渡っています。私も出ます。





数日のことなど b)発行日を間違えました

8月31日(月)に、「詩の通信IV」の発行日だと書きましたが、間違いでした。まだ先の、9月7日(月)です。間違えたおかげで、詩はほぼできましたが、することがいろいろある中、余計な作業ではありました。

かつて、オープンマイクの、詩の朗読会に出た時のことです。順番は自由で、名乗り出ればよかったのですが、その夜は無性に詠みたくなり、いちばんに舞台に立ちました。とにかく、詠みたかったのです。身体が止まりませんでした。奮えが来るようでした。早く詠みたい気持ちでいっぱいでした。決して上手な朗読ではありませんでしたが、その時の気持ちを、忘れたくないと思っています。義務でも何でもなく、本当に詠みたかったのです。その時の詩は、後に清道洋一さんの手で音楽になった、『ナホトカ音楽院』でした。

やはり私は、アルゼンチンのホルヘ・ルイス・ボルヘスに影響を受けているなと、ここ数日、実感しています。去る6月に、ボルヘスの『創造者』が岩波文庫に入ったことで、心が改めて動きました。トロッタ9とボッサ5のチラシを置きに回っていて、古本屋に置かせていただく場合は、何か本を買います。決まって探すのが、ボルヘスの作品です。私の作品には、ボルヘスの影響をまともに受け、自分もこんな世界を創ってみたいと思って書いた詩があり、それは恥ずかしいことだと思いますが、その恥ずかしさを直視しようと思います。作品は、「詩の通信I」にある、『何を、私たちは知っているというのか』です。その前後に『椅子のない映画館』と『犀』があり、これらもボルヘスの影響下にあるのでしょうが、少し違うところに立つものだと思います。特に『椅子のない映画館』は。私の課題は、『何を、私たちは知っているのか』を、より強く、私の側に引きつけ、書き直すことです。そうしたら、どなたかに、作曲していただきたいと思っています。愛着はあるのです。

数日のことなど a)横浜の演奏会

8月31日(月)は、横浜で開かれた、ふたつの演奏会に出かけました。いずれも、赤レンガ倉庫3Fホールが会場です。15時30分からの「神奈川から世界へ 横浜ゆかりの作曲家を聴く」と、17時からの「未来の古典 同時代の邦楽」です。「横浜ゆかりの作曲家」は、後半からしか聴けず、また台風の風雨にさらされての横浜行きでした。このホールは初めてです。音楽評論家・西耕一さんらによる、意欲ある試みでした。トロッタ関係では、清道洋一さんと山本和智さんの曲を聴きました。山梨公演を行っての横浜公演であり、この後、萩での公演も行われます。トロッタの前に演奏会に出かけると、決まって、次は私たちの番だと思います。

この日は書評原稿の締め切りがありましたので、横浜までコンピュータを持っていき、時間を見つけては原稿を書いていました。携帯できるコンピュータですが、本当は、こんなことをしたくありません。重いからです。以前、もう10年前ですが、今ではトロッタの公式サイトになったkibegraphy.comを、私的なサイトとして運営していたころ。毎日の掲示板への書き込み、文章の更新を行っていて、疲弊し切りました。こんなことをしていては身体が持たなくなると思いました。そのようなことを時に感じるのは、サイトを運営する以上、宿命です。今も、トロッタのためのサイトとブログを持っています。毎日の書き込みを、トロッタ成功の願掛けなどといいながら、ここ2、3日、書いていません。もっと楽に書けるようになりたいと思っています。
ちなみに、書評原稿というのは、FIGARO Japon本誌のための、鹿島田真希さん『黄金の猿』と、WEB版FIGAROのための、磯崎憲一郎さん『終の住処』です。特に、磯崎さんの作品は、芥川賞を受賞したので、書名を記憶している方も多いと思います。よくできた文学作品には、ライヴ感があります。そのような詩を、書かなければいけません。トロッタ9のための詩は、当然できていますが、ボッサのための詩は、まだできていません。ソロの詩唱のためなので、本番に間に合えばいいのですが。