うらわ美術館にて、開館10周年記念展「オブジェの方へ − 変貌する『本』の世界」を観てきました。トロッタ9が終了した直後、ある方の感想をうかがった後、青山界隈を歩いていまして、ふと立ち寄った古書店で、この展覧会のことを知りました。本の展覧会。それはただ珍しい本を並べてあるだけでなく、オブジェとしての本、造形物の展示会です。そこでは、本は本の形をとどめていません。読むための本ではなく、形を見るための本がありました。例えば遠藤利克の『敷物−焼かれた言葉−』(93)は、真っ黒に焼いた本にタールをしみこませ、約6メートル×3メートルの広さに積み重ね、敷き詰めたオブジェです。言葉は焼かれています。言葉は失われました。そこに人は、なお言葉を探すのでしょうか? いっそ、言葉が失われたことに、爽快感を覚えるのでしょうか?
この展覧会が、私に、あるいはトロッタに、何かをもたらすかといえば、それはわかりません。しかし、人は音楽だけで生きられるはずがなく、言葉だけで生きられるはずがなく、日常の積み重ね、記憶の断片、連なり、積み重ねが、詩と音楽を生むと思うから、このような展覧会にも、私は足を運びます。
帰路、吉祥寺の古本屋に寄りました。いつもトロッタのチラシを置かせていただいており、その御礼もかねて、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの自撰短編集『ボルヘスとわたし』を購入しました。田中修一さんに依頼され、『ムーブメント』の原詩、『乱譜』の続篇『瓦礫の王』を書きました。その時に、田中さんが、このような世界で、と提示されたのが、ボルヘスの『ブロディーの報告書』でした。個人的な好みは別として、田中さんもボルヘスを好んでことがわかり、おもしろいと思いました。
0 件のコメント:
コメントを投稿