2010年10月18日月曜日

「トロッタ12通信」.12 (*10.17分)

*ソプラノの柳珠里さんとピアノの森川あづささんで、『ムーヴメントNo.3』と、『北方譚詩』を練習しました。『ムーヴメント』には他の楽器があり、『北方譚詩』は女声三部の曲なので、どちらもソプラノ中心の練習です。合わせて、私自身の練習もしなければなりません。心の中には、自分の練習をもっとしたい気持ちがあります。

『北方譚詩』の二曲で、まず書きましたのは、『北都七星』です。堀井さんが北海道在住なので、札幌を舞台にしました。堀井さんがお住まいの苫小牧など、札幌以外の町を想像できないのは、私の経験のなさで、申し訳ないと思います。ただし、舞台がどこであると、特定はしていません。
札幌には、伊福部昭先生の取材で訪れました。それ以前にも、仕事として、取材で訪れました。生活の舞台ではなく、ドラマの舞台として、札幌はありました。札幌という町自体がロマンの対象になるのでしょう。『凍った崖』という題名で、長編小説も書きました。自分の心情を吐露しているだけで、読む側には価値がないものだと思います。“ひとり芝居”です。少し前まで私がしていたことといえば。トロッタの私は、“ひとり”ではありません。
『北都七星』で書こうとしたのは、男性にとっては永遠のロマンである、女性という存在です−女性をロマンとしかとらえられないのも、想像力のなさかもしれません。女性は、ロマンではないかもしれない。もっと生々しい存在と見るべきかもしれない。男女間の裏切り、裏切られといった関係を、知らないではありません。しかし、抱き続けている女性への憧れを無理に捨てよといった自己追及は、好きではありません。女性をロマンの対象と見るのが私なら、無理に変えないで、その方向で可能性を深め、広げていけばいいのではないでしょうか−。
 北の町に女性がいます。北の夜空に、星が見えます。それは北斗七星。“北都七星”という言葉が生まれました。言葉遊びです。しかし、この光景を何とかしてつかまえたい、造形したいと思いました。詩に描いた女性は、裏切りと裏切られをすでに経験した、大人の女です。美しい姿の底に、傷を、彼女は負っています。

北都七星

木部与巴仁

北の都に
七つの星が現われた
冬の夜のできごと

あなたは見ただろう
底なしの沈黙が世界を覆う
冷たい光景
往く道は白く
どこまでも白く

目を伏せて
マントの襟を合わせたまま
黒い気配の
あなたは歩いた
悪い噂も
哀しい記憶も
消えてゆく
虚ろだった笑いさえ
遠ざかる

永久(とこしえ)に
この時よ続け
いまはただ
純潔の人影として

北の都に
七つの星が光る
音のない夜
あなたの心に
呼びかけていた

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