*橘川琢さん作曲『黄金の花降る』4曲のうち、「くろとり」「紫苑」の合わせを、池袋のフォルテで行いました。形にはなりましたが、もっと細かな表現が必要です。詩唱者は、私と中川博正さんです。私はどうしても、中川さんと違う詠み方にしたいと思います。
堀井友徳さん作曲『北方譚詩』のうち、『北都七星』については、堀井さんの中に、いろいろな構想が生まれたようです。合唱曲にする、それも混声合唱にする、あるいは女声のみの合唱にする、など。これはうれしいことです。構想を生んでもらうだけの力が、詩にあったわけですから。また、詩がそれほど長くないので、もう少し長く歌えるものの方がよいのでは、ということから、詩を三番まで書きました。詩の言葉も、最初の完成形から少し変えるなどしました。三番までの詩は、結局、生きませんでしたが、それは問題ありません。詩を書く機会が生まれただけでありがたいことです。できた曲を聴きますと、きれいですし、言葉もスムーズに運びますから、別に時間をかけたとか、完成までに二転三転しているなど感じないと思いますが、それなりの手間はかけています。それはどんな曲であれ、どんな表現であれ、当然のことです。俳句など十七文字ですが、そこにかける表現の凝縮度は、すさまじいものです。人の歴史が問われます。俳句にくらべれば、歌には時間の流れがあります。物語が起って終わるまでの、ゆったりとした時間。俳句は写真や絵のようです。歌は、演劇や文学に似ています。
『北都七星』の一番を書いて送りましたのは、4月12日でした。これはほぼ、今日の形です。二番と三番は、4月24日に書いて送りました。参考までに、二番と三番を掲げます。一番にすべてあるのが本当です。結局、歌は、そうなりました。しかし、その世界を味わうという意味では、二番、三番と続くのもおもしろいとは思います。
(『北都七星』二番以降)
北の鳥が
七つの星を見つける
冬の夜のできごと
あなたは聴くだろう
人もない街角で口ずさむ
恋人たちの歌
吐く息は白く
氷のように白く
歌えればいい
思いながら過ごしていた
私だって歌を
あなたは見つめる
黒い影が
砂にしみこむ
水のように
音もなく融けてゆく
虚しさの一瞬
永久に
この時よ続け
いまはただ
純潔の身を抱いて
北の都に
七つの星を飛ぶ
鳥たちがいた
あなたは声もなく
見上げていた
*
北の森に
七つの星が落ちた
冬の夜のできごと
あなたは知るだろう
迷路に似た運命の地図を捨て
歩き始める
その道の白さ
心を突く白さ
逢いたかった
最後の言葉を交わしたくて
リラの木陰に
あなたを探した
孤独の身を
マントで包み
立ち尽くす
忘られぬ日の思い出
逢いたかった
永久に
この時よ続け
いまはただ
純潔の身を抱いて
北の都に
七つの星は流れる
森の奥深く
あなたは消えた
残るのはただ風の声
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