2010年10月22日金曜日

「トロッタ12通信」.15 (*10.20分)

*橘川琢さん作曲『黄金の花降る』4曲のうち、「くろとり」「紫苑」の合わせを、池袋のフォルテで行いました。形にはなりましたが、もっと細かな表現が必要です。詩唱者は、私と中川博正さんです。私はどうしても、中川さんと違う詠み方にしたいと思います。

 堀井友徳さん作曲『北方譚詩』のうち、『北都七星』については、堀井さんの中に、いろいろな構想が生まれたようです。合唱曲にする、それも混声合唱にする、あるいは女声のみの合唱にする、など。これはうれしいことです。構想を生んでもらうだけの力が、詩にあったわけですから。また、詩がそれほど長くないので、もう少し長く歌えるものの方がよいのでは、ということから、詩を三番まで書きました。詩の言葉も、最初の完成形から少し変えるなどしました。三番までの詩は、結局、生きませんでしたが、それは問題ありません。詩を書く機会が生まれただけでありがたいことです。できた曲を聴きますと、きれいですし、言葉もスムーズに運びますから、別に時間をかけたとか、完成までに二転三転しているなど感じないと思いますが、それなりの手間はかけています。それはどんな曲であれ、どんな表現であれ、当然のことです。俳句など十七文字ですが、そこにかける表現の凝縮度は、すさまじいものです。人の歴史が問われます。俳句にくらべれば、歌には時間の流れがあります。物語が起って終わるまでの、ゆったりとした時間。俳句は写真や絵のようです。歌は、演劇や文学に似ています。
『北都七星』の一番を書いて送りましたのは、4月12日でした。これはほぼ、今日の形です。二番と三番は、4月24日に書いて送りました。参考までに、二番と三番を掲げます。一番にすべてあるのが本当です。結局、歌は、そうなりました。しかし、その世界を味わうという意味では、二番、三番と続くのもおもしろいとは思います。

(『北都七星』二番以降)
北の鳥が
七つの星を見つける
冬の夜のできごと

あなたは聴くだろう
人もない街角で口ずさむ
恋人たちの歌
吐く息は白く
氷のように白く

歌えればいい
思いながら過ごしていた
私だって歌を
あなたは見つめる
黒い影が
砂にしみこむ
水のように
音もなく融けてゆく
虚しさの一瞬

永久に
この時よ続け
いまはただ
純潔の身を抱いて

北の都に
七つの星を飛ぶ
鳥たちがいた
あなたは声もなく
見上げていた



北の森に
七つの星が落ちた
冬の夜のできごと

あなたは知るだろう
迷路に似た運命の地図を捨て
歩き始める
その道の白さ
心を突く白さ

逢いたかった
最後の言葉を交わしたくて
リラの木陰に
あなたを探した
孤独の身を
マントで包み
立ち尽くす
忘られぬ日の思い出
逢いたかった

永久に
この時よ続け
いまはただ
純潔の身を抱いて

北の都に
七つの星は流れる
森の奥深く
あなたは消えた
残るのはただ風の声

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