『めぐりあい』とは、トロッタの会場における、出演者とお客様のめぐりあいである。出演者同士のめぐりあいでもあり、お客様同士のめぐりあいでもある。
私自身、さまざまな人とめぐりあったからトロッタを開催できているので、そうしたことへのありがたさ、喜びを、素直に詠みたかった。−宮﨑文香さんは、酒井健吉氏が主催する長崎の演奏会で初めて会い、田中修一氏とは、伊福部昭先生の関係で、箏曲家・野坂惠子さんの会で初めて会った。どなたとも、一朝一夕の関係ではない−
日ごろから、難しい詩を書きたいと思っているわけではない。ただ、生きていると簡単に済まない様々なことに直面するので、そうしたことへの思い、そうしたことに向き合おうとする姿勢が、短いよりも長い、薄いよりも厚い、単純よりも複雑な詩の形になって現われることがある。それを仕方のないことと思うのではなく、長く厚く複雑な詩を、おもしろいと感じることもあるのだ。仮に技術があるとして−私は技術などいらないし、それに頼りたくないという気持ちを抱きながら−、技術をふるって長く複雑なものを書けるなら、そのこと自体をおもしろがるという心の動きは、誰にでもあるだろう。
しかし、『めぐりあい』はそうではない。短くてシンプルな詩である。素直さを大事にしたかった。
ただ、初めの詩は自由に書けたが、二篇目からは、メロディに合わせて詩を作っていかなければならず、それは苦痛であった。自由さを失っているのであり、純粋に技術の話になってしまうので、これでいいのかという思いも抱いた。
もちろん、私ひとりが疑問を抱き、技術を否定するなどと意気込んでも駄目である。6名に及んだ編曲の方々は、それぞれの技術をふるっている。技術がなければ、編曲などできるものではない。ありがたいことだと思っている。だから私も、あらゆることに応えたく、少ない技術をふるった。
「初めて詩を読ませていただいた時、生き物の鼓動が脈打つようなメロディが聞こえてきました」
作曲者、宮﨑文香さんの言葉である。そのような詩であるかどうかはわからないが、素直に受け取っておきたい言葉だ。宮﨑さんに対しても、すばらしいメロディを書いていただいた感謝の言葉を贈りたい。
そして、『めぐりあい』は独唱歌曲として生まれ変わる。
編曲は、田中修一氏である。
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