2010年10月14日木曜日

「トロッタ12通信」.9 (*10.14分)

 田中修一氏に対し、全体を四季の移り変わりでまとめたいという考えは伝えた。その上で、詩を構成したのは田中氏である。私自身、オリジナルの詩を若干変更した。(一部は、この原稿を書きながら、田中氏と相談しながら変えた。「流れる川がぬるむころ」を「季節が春に向かうころ」に。「季節が夏に向かうころ」を「白い花が夏に開くころ」に。四季の始まりに、季節の名前を置きたいというのが最大の理由である。詩の変更にともない、わずかではあるが、メロディを変更していただいた)

季節が春に向かうころ
わたしたちはめぐりあう

黒い土が
のぞいている
雪解け道を
駆けていた

輝いてる きらきらと
春の日ざしに
目を細め
冷たい季節を
見送った
(註;ここまでが「春」である。十数年前、北海道の小樽に行った時、雪解けの季節で、雪の間から黒い土がのぞいていた。雪解け水が流れていた。詩の通りの風景を見て、忘れられず、詩に詠んだのである)
白い花が夏に開くころ
わたしたちはめぐりあう

風が吹いた
不安な街角
影に寄り添い
歩いていた

鳥でさえ歌うのに
歌いたいの
鳥と一緒に
明日こそ
晴れるようにと

どこへ行くの?
わからない でも
私は生きられる
(註;「夏」の詩である。初めて書いた『めぐりあい』の光景。私が暮らす、都会の光景を描きたかった。都会にもめぐりあいがあり、季節の訪れはあるということを詠みたかった。人を含めた、都会の生き物、動物と植物への強い共感が、私にはある)

ながい雲が秋を描くころ
わたしたちはめぐりあう

海が見える
遠い海原
潮騒の歌に
耳を澄ませて

赤く燃える水平線に
とまらなかった
私の涙
しずくになって
波間に溶けた
(註;「秋」は、トロッタ9のために書いた詩。この会は海にまつわる曲が多く、エレクトーン奏者の大谷歩さんを、山口県からお招きした。大谷さんとは、海についての話もした。その影響が、詩に現われていると思う。それにしても、トロッタ9が一年前とは考えられない。もう数年も前のことのようだ)

木枯らしが冬を告げるころ
わたしたちはめぐりあう

生まれ変わる
今は死んでも
落ち葉の下で
目を閉じた

銀色の糸が舞う
旅に出た
小さな蜘蛛
雪迎え
さよならの時

どこへ行くの?
わからない でも
わたしは生きられる
ありがとう
あなたの歌を聴いたから
(註;「冬」である。蜘蛛の子どもたちを詠んだ。『雪迎え』という詩があり、酒井健吉さん作曲で曲にもなった。トロッタで演奏した曲の世界を、『めぐりあい』に取り込みたかったのである。初めて聴く人にはわからないかもしれず、説明が必要かもしれないが、あえて、そのままにする。蜘蛛の子どもたちが旅立ちをするという情景は、思い浮かべていただけると思う)

 トロッタの作曲家何人かから、歌える詩をほしい、というご希望をいただいている。素直な歌を書きたいという思いがあるのだろう。私も書きたい。そのひとつが、トロッタ12からアンコール曲として演奏される、『たびだち』である。どんな曲になるか、ご期待ください。

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