2009年5月4日月曜日

トロッタ3、4の詩篇を公開しました

引き続き、トロッタ3とトロッタ4の詩篇を公開します。これで、2007年分を公開したことになります。トロッタ3を開催した日、“詩と音楽のための”と銘打たれた雑誌、「洪水」の取材を受けました。翌日に座談会を行いました。「洪水」と、その編集長、池田康さんのことは、また改めて触れます。

『旅』は、2006年6月4日(日)、細川周平さんとともに谷中ボッサで行った「声と音の会2/旅をする詩、音楽」で披露された詩です。その時は酒井健吉さんの作曲ではなく、パンデイロ奏者・内藤修央さんの演奏で、即興的に詠みました。打楽器の音がとても効果的で、楽しい経験でした。トロッタ3の初演を経て、2007年7月22日(日)の「名フィル サロンコンサート/詩と音楽2007」で再演され、2008年8月22日(日)、長崎市で行われたkitara音楽研究所・第5回演奏会で三演されました。

『大公は死んだ 付・みのむし』は、音楽を伴わない詩唱です。異国的な内容と、支配者の孤独な死の情景にひかれて書きました。その死を、同じ部屋にいる蓑虫が見ているという視点を加えました。後、2008年6月8日(日)のトロッタ6にて、田中修一さんのルネサンス・リュート曲と合わせ、『「大公は死んだ」附ルネサンス・リュートの為の「鳳舞」』として演奏されました。

『詩歌曲 時の岬・雨のぬくもり〜木部与巴仁「夜」・橘川琢「幻灯機」の詩に依る』は、この時が初参加の橘川琢さん作曲です。トロッタ3は、2台ピアノの会でもありました。作曲者自ら、もう1台のピアノを弾いたことが、とても効果を生みました。この時の歌は、ソプラノの成富智佳子さん。つい先日、2009年3月22日(日)に行われた「橘川琢作品個展2009『花の嵐』」で再演されました。歌は、ヴォーカルの笠原千恵美さんでした。

『声と2台ピアノのためのムーヴメント〜木部与巴仁「亂譜」に依る』を構想したことが、トロッタ3の特徴である2台ピアノに結びつきました。私の中では、都市といえば新宿の風景が浮かんできますが、どこでもよいと思います。ピアノ1台を小さいとは決して思いませんが、私の中には、できるなら少しでも大きいものを、という欲求があります。この志向は、きちんと人に説明できるものにしなければと思います。簡単な言い方にとどめますが、スケール感のある表現を、私は求めています。

〈トロッタ4〉
『こころ』は、田中修一さんが、萩原朔太郎の詩をもとに作曲した歌曲です。1993年の作曲ですから、14年も前のものです。しかし、これが初演となりました。この時のソプラノは、成富智佳子さん。2008年12月6日(土)のトロッタ7にて、ヴォーカルの笠原千恵美さんが再演しました。初演、再演と重ねて、曲を生かしたいと思います。私以外の詩が取り上げられるのは、とてもいいことだと思っています。

『みみず』は、私が隔週で発行している、「詩の通信」の第l期第3号で、2005年12月9日に発表した詩です。みみずという小さな生き物に、大きな世界を託そうとしました。当然の話ですが、私はみみずが大好きです。みみずの存在に感謝を覚えています。

『バッハの無伴奏ヴァイオリン曲とともに詠む 塔のある町/付・世界を映す鏡』は、既成の曲と合わせて詩唱したいと思い、このような形になりました。いうまでもなく、バッハの曲には深みと歴史があります。それと私の詩を一緒に聴いていただこうというのですから、思い切ったものです。代々木上原にある、イスラム教の礼拝堂の近くを歩いた体験をもとに、詩を書きました。2008年11月24日(月)、長崎県美術館で行われたフィルハーモニックオーケストラ・長崎の演奏会にて再演されました。

『兎が月にいたころ』も「詩の通信」第l期に発表した詩で、第6号、2006年1月20日の発表です。幼いころの記憶がもとになっています。トロッタ3で初演した『旅』の最後に、自転車の荷台に乗せられて夜の田圃を行く子どもが、父親と会話する場面がありますが、それも幼年期の思い出です。子どものころの記憶はなくならず、ますます鮮明になっていくようです。2006年7月15日(土)の「名フィル サロンコンサート/詩と音楽」で初演されました。

『オーボエとピアノ、朗読による「冷たいくちづけ」』は、春日浩克さんのオーボエを生かそうとして、橘川さんに書いていただいた曲です。初演後の2007年8月19日(日)、「名フィルの日」でヴァイオリン版を演奏しました。「橘川琢作品個展2009『花の嵐』」では、オーボエ版、ヴァイオリン版とも演奏しました。橘川さんの名曲だと思っています。

『夜が吊るした命』は、2006年2月5日(日)、長崎県諫早市で行われたkitara音楽研究所・第3回演奏会「私たちの音を求めて」で初演されました。編成が大きいこの曲を演奏することが、トロッタ4の、ひとつのテーマでした。詩は、神田駅に止まった電車から見た光景を詠んでいます。生きることの不条理さを痛切に感じました。

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