それにしても、もう半年も前の公演です。スケジュールが合わなかったのですが、間隔が開きすぎているというのが実感です。
『嗟嘆(といき)』は、甲田潤さんが曲を出してくれました。これまで協力という形でしたので、甲田さんに何とか登場してもらえないかと、ずっと思っていました。1989年ですから、もう20年も前の曲です。解説は不要でしょう。あえていうなら、解説に記された「憧れる美しい人に寄せる青年の純粋な恋心」が、甲田さんにあると、私は解釈します。
『こころ』は、トロッタ4で初演された曲の再演です。もともとシャンソンのための曲であり。シャンソン歌手、笠原千恵美さんの登場が、再演をうながしました。田中修一さんは、『遺傳』と合わせ、朔太郎の詩にもとづく歌曲を、トロッタで二曲、発表しています。トロッタは基本的にそうですが、日本語詩による曲を創作、発表する場でもあります。
『花の記憶』で、花道家、上野雄次さんがトロッタに初登場しました。この曲は、2008年10月20日(月)、すみだトリフォニー小ホールにおける、日本音楽舞踊会議作曲部会公演「7+1の音像」で初演されました。『花の記憶』を皮切りに、『死の花』『祝いの花』を書き、“花の三部作”と銘打ちました。いずれ、全曲を演奏する機会を持ちたいと、橘川琢さんは構想しています。
『齟齬』は、初登場となった山本和智さんの作曲です。ジャズアンサンブル、Gymnema sylvestre Trioが出演しました。PAを通した演奏は、トロッタとして初めてでした。弦楽カルッテットとの共演で、文字通り、“齟齬”の世界が表わされました。山本さんは、2009年度武満徹作曲賞の最終選考に残っておられます。発表は5月31日(日)。トロッタ8と同じ日です。よい結果を期待します。
『ナホトカ音楽院』は、歌あり語りあり演奏あり、さらに映像も印刷物もある、非常な演劇性をともなった曲で、清道洋一さんらしさが横溢する作品となりました。断るまでもありませんが、これはすべて架空の世界です。しかし、トロッタ7においては現実の世界です。どの曲でもそうだと思います。架空のものだと思いながら演奏する人はひとりもいません。
『神羽殺人事件』は、Fabrizio FESTA氏による、日本語の詩唱を伴った曲を作曲したいという願いに応じて書きました。これは、日本人の作曲家にとっても、難しい内容だったと思います。『天の川』のようにアリアが用意されたわけでもなく、『ナホトカ音楽院』のように音楽をテーマにした世界でもなく、これは音楽性がまったくない、推理小説のような内容です。どうして、このような詩を、彼に提供したのか。後悔ではなく、挑戦する姿勢はいいのですが、ハードルが高すぎたと思いました。しかし、彼はよく、日本語がわからないのに、音楽にしてくれました。感謝しています。ちなみに、神羽山という三角の岩山は、私が生まれた土地にある山をモデルにしました。風景としては実在しています。
『めぐりあい 冬』は、宮﨑文香さんの曲を、橘川琢さんが編曲しました。橘川さんらしい、弦楽四重奏とピアノ演奏を伴う合唱曲です。トロッタ7のフィナーレを飾るにふさわしい演奏でした。
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