2010年1月1日金曜日

「11へ」;7

トロッタ11にて、バリトンの根岸一郎さんが歌う予定の、伊福部昭先生の歌曲、『摩周湖』です。トロッタ10での、『知床半島の漁夫の歌』に続き、伊福部歌曲を取り上げることになりました。詩は、同じく更科源蔵氏です。1943年刊行の、更科氏の詩集『凍原の歌』から、引用します。


摩周湖


大洋(わだつみ)は霞て見えず釧路大原

銅(あかがね)の萩の高原(たかはら) 牧場(まき)の果

すぎ行くは牧馬の群か雲の影か

又はかのさすらひて行く暗き種族か


夢想の霧にまなことぢて

怒るカムイは何を思ふ

狩猟の民の火は消えて

ななかまど赤く実らず


晴るれば寒き永劫の蒼

まこと怒れる太古の神の血と涙は岩となつたか

心疲れし祖母は鳥となつたか

しみなき魂は何になつた


雲白くたち幾千歳

風雪荒れて孤高は磨かれ

ヤマ ヤマに遮り はて空となり

ただ

無量の風は天表を過ぎ行く


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