トロッタ11にて、バリトンの根岸一郎さんが歌う予定の、伊福部昭先生の歌曲、『摩周湖』です。トロッタ10での、『知床半島の漁夫の歌』に続き、伊福部歌曲を取り上げることになりました。詩は、同じく更科源蔵氏です。1943年刊行の、更科氏の詩集『凍原の歌』から、引用します。
摩周湖
大洋(わだつみ)は霞て見えず釧路大原
銅(あかがね)の萩の高原(たかはら) 牧場(まき)の果
すぎ行くは牧馬の群か雲の影か
又はかのさすらひて行く暗き種族か
夢想の霧にまなことぢて
怒るカムイは何を思ふ
狩猟の民の火は消えて
ななかまど赤く実らず
晴るれば寒き永劫の蒼
まこと怒れる太古の神の血と涙は岩となつたか
心疲れし祖母は鳥となつたか
しみなき魂は何になつた
雲白くたち幾千歳
風雪荒れて孤高は磨かれ
ヤマ ヤマに遮り はて空となり
ただ
無量の風は天表を過ぎ行く
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